オーストラリア火災で「誤報」流すメディアの愚 メディア王マードックによる情報操作

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オーストラリアの火災をめぐるメディア報道が錯綜している(写真:Matthew Abbott/The New York Times)

オーストラリアのシドニー南方の燃え上がる森の奥深くで、ボランティアの消防隊員らが近くの炎を押さえ込もうと、木々を伐採して道をつくっていた。するとそのうちの1人がブルドーザーの音に負けないよう叫んだ。

「木々が倒れている写真を撮らないで」と彼は言った。「“グリーニー”たちに知られたら、すべて終わりだ」。

グリーニー、つまり環境保護主義者が、火災で家屋や人命が犠牲になるのを防ぐ措置に反対しているという考えは誤りだ。だがその言葉は、保守的なオーストラリアのメディア、とくにルパート・マードックが所有する有力な新聞やテレビ局がこの何カ月も喧伝している話を反映している。

誤報の拡散に力を入れている

マードックが所有するメディアが流布しているのはそれだけではない。全国紙オーストラリアンは、今年の火災は例年よりも深刻ではないと繰り返し報じている。しかし、科学者らによればそれは真実ではない。これまでに約5万平方キロメートルが焼失し、ニューサウスウェールズ州の焼失面積は2019年だけで過去15年の累計よりも大きいという。

1月8日には、オーストラリア最大のメディア企業であるマードックのニューズ・コーポレーションが、別の誤報の拡散に加担していることが明らかになった。独立した調査で、インターネットボットやトロール(荒らし)が、森林火災が放火に起因するという見方を誇張していたこと、そしてそれと同時に、オーストラリアンのウェブサイトで同様の主張をする記事が最も読まれていたことがわかったのだ。

これは、強力な報道機関が主導する執拗な試みの一端だとして批判されており、アメリカとイギリスでも同じようなことが起きている。責任を左派に押しつけ、保守的な指導者を擁護し、気候変動から世間の注目をそらすのだ。

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