アップルとFacebookは個人情報をどう守るのか 2社のプライバシー担当役員が公式に語った
ここで言及しなければならないのが「クッキー」の取り扱いです。クッキーとは、簡単に言えば、ユーザーのブラウザと閲覧ウェブサイトのサーバーの間でデータをやり取りする仕組み、またはブラウザごとにユーザーIDやパスワードなどのデータを保存・管理するものです。そして、このクッキー(サードパーティクッキー)がユーザーの認識がないままオンラインでのターゲティング広告に利活用されています。私たちのブラウザに自分の関心や直近の閲覧行動に関連したと思われるような広告が表示されてくるのは、このクッキー(サードパーティクッキー)が働いているからです。
カリフォルニア州CPAではクッキーも個人情報として扱われますので、法規制対象となります。つまり、広告代理店やアドテック企業は、クッキーの取扱いに法的な制限がかかる、ターゲット広告にクッキーを利活用しづらくなります。もともと法制化の前からクッキーの利活用に関する業界の自主規制もあり、関係企業は対策を施してきましたが、これからは法律によって規制されることになります。
現時点では、カリフォルニア州CPAのような法規制はカリフォルニア州に限定されています。しかし、パネルディスカッションでは、FTCのスローター氏は、個人的な見解としながらも、連邦レベルでも同様の法律が制定されるべきであり、それは2021年までに法制化される可能性が高いという見通しを示しています。こうしたプライバシー規制強化の流れは、アメリカにおいてはもはや不可逆となってきているのです。
なお、実はすでに広告代理店やアドテック企業などオンラインでのターゲット広告事業をおこなう企業は、サードパーティクッキーの利活用の自主制限が行われていることから、ターゲット広告の精度が落ち、売り上げや利益も低迷するという状況に置かれ始めています。実際、そういった企業の株価が下落したり、買収されたり、倒産するケースなども目立ってきているのです。
2020年は「プライバシー・テック」の年に
翻って日本では、プライバシーについてのアメリカの現状を知るビジネスパーソンは依然少なく、そもそも「チーフ・プライバシー・オフィサー」という役職名を聞いたことがある人自体少ないのではないかと思われます。日本は、データの利活用に関して、アメリカメガテック企業に比べて著しく遅れをとっていることがかねてから指摘されていました。また、プライバシー重視の姿勢や法規制についても、さらに周回遅れの状況となっています。
CES2020での重要なテーマとして「データの利活用」と「プライバシー重視」の両立が挙げられます。「データの時代」となっていることが明白である一方、同時に「プライバシーの時代」でもあるのです。
このような中で、日本にはどのような対応が求められているのでしょうか。それは、「データの利活用」でも「プライバシー重視」でも周回遅れであるからこそ、両者の状況を冷静に分析し、より的確な答えを見出していくことです。そして、むしろ後発の利益を意図的に享受するような、さらにはその両立において世界をリードするような戦略的な動きをとっていくべきではないかと考えられます。
アメリカでは、ここ数年、プライバシーを保護するためのテクノロジーである「プライバシー・テック」の製品・サービスが支持されてきています。特に、本稿で指摘したように、プライバシー重視で高い評価を受けるアップルでさえも、規制当局からはプライバシー重視への取り組みが十分ではないと示唆される点は驚くべきことでした。日本においても、今年は、こうした「プライバシー・テック」やプライバシー重視の流れが押し寄せてくると考えられます。その意味で、2020年は、日本企業にとって、「データの利活用」と「プライバシー重視」の両立に関して本質的で具体的な対応が求められる1年となってくるのは確実だと思われます。
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