海運業界は環境厳しく、業績・財務の本格的な回復には時間がかかる《スタンダード&プアーズの業界展望》

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事業法人・公益事業格付部
上席アナリスト 中井 勝之

2009年4~9月期の海運大手3社、日本郵船、商船三井(BBB/安定的/−−)、川崎汽船(BBB−/CWネガティブ/−−)の経常利益は合計で980億円の赤字となり、4000億円を超える黒字となった前年同期から大きく落ち込んだ。世界的な景気減速を受けて海上荷動きが減少したうえ、コンテナ船や不定期船、油送船など主力部門の運賃が大幅に下落した。特にコンテナ部門では、3社合計の損失金額が1000億円超の規模に膨らんだ。これまで安定的に収益に貢献していた自動車輸送部門でも、2009年に入って輸送台数が急減、その後も低迷が続いており、採算が悪化した。

各社はコスト削減努力を一段と強化するとともに、スクラップやチャーター船の返船を通じて保有船体の縮小を進めることで、荷動きの低迷や市況悪化の影響を低減させる経営努力を進めているが、2009年4~9月期は事業環境悪化のスピードに追いつくことができなかった。本格的な業績回復の見通しにはなお不透明さが残ることから、スタンダード&プアーズでは各社の財務体質改善には一定の時間を要する可能性が高いと考えている。

今後1~2年の業績の見通しは依然厳しい

各社が老朽船のスクラップや新規投資の抑制を通じて輸送能力の調整を進めていることや、海上荷動きは中長期的には回復する見通しであることを踏まえると、極端な市況の低迷が数年間にわたって続くリスクは限られる、とスタンダード&プアーズではみている。しかし、コンテナ船部門に関しては、先進国向け消費財輸送需要の回復見通しが依然不透明であるうえ、今後も各社の大型コンテナ船の竣工が見込まれることから、当面は厳しい事業環境が続く可能性が高い。ドライバルク船やタンカー、液化天然ガス(LNG)輸送などでの顧客との長期契約などが今後も収益をある程度下支えするとみられるものの、少なくとも今後1~2年で各社の業績が本格回復できる見通しは現時点では限られる、と考えている。


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