鳩山首相が犯した2つの“経済失政”−−リチャード・カッツ

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現在、鳩山政権は経済的な現実を受け入れつつある。しかし、それは自らが大胆に指導力を発揮するのではなく、事態の流れに押されてやっているように見える。菅直人副総理は、失業率の上昇に対応するために1月に補正予算を組むことを主張している。これに対して藤井裕久財務相は、新規国債発行額を44兆円以下に抑制すべきであると繰り返し主張している。税収は予想をはるかに下回っており、藤井財務相は今年度の国債発行は50兆円に達するかもしれないと語っている。

そんな中で鳩山首相は愚かにも各大臣に、来年度予算の概算要求を89兆円以下に抑制するように指示したが、結局、概算要求の総額はほぼ95兆円に達することが明らかになった。鳩山首相は、この額を92兆円にまで削減したいと語っている。

鳩山チームのボスは誰なのか

なぜ鳩山首相は、景気が危機的な様相を呈しているのに追加的な財政刺激策が必要なことを率直に説明しないのか理解に苦しむ。

ある専門家は、民主党は財政赤字が問題であると教え込まれている国民に対して“責任あるポーズ”をとる必要があるからだと説明している。しかし、財政赤字の拡大と失業率の上昇とでは、どちらが次の選挙で民主党の足を引っ張ることになるのか明白である。

藤井財務相は、債券市場の信頼喪失を懸念していると語っている。しかし、投資家が現在の財政赤字の拡大を脅威と感じているのなら、国債に対して高いリスクプレミアムを要求するはずである。しかし、現実には10年物国債の利回りは1・3%にすぎず、この10年間でほぼ最低水準にある。

二つ目の懸念は、亀井静香内閣府金融・郵政改革担当特命相の、中小企業と個人の借り入れを3年間返済猶予するという無謀な提案である。もし同提案が当初案どおり成立すれば、1年間で数兆円の金利収入が減り、銀行の預金者への金利支払い能力が損なわれ、金融逼迫を招くことになるだろう。

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