帰ってきた「ローラアシュレイ」新店戦略の焦点 日本撤退から約2年、ワールド運営で再出発

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イオンによる事業終了を受け、2018年8月に伊藤忠が国内での独占輸入販売権とマスターライセンスを取得。その後、伊藤忠は小売事業を担えるパートナー企業を探し、ワールドグループとの合意に至った。アパレルを主力とするワールドはグループ内で「イッツデモ」や「ワンズテラス」など服飾雑貨や生活雑貨を中心に取り扱う小売店も展開しており、アパレル以外への事業領域の拡大を進める狙いだ。

大まかな商品構成は、およそ半分がインテリアや生活雑貨、残りの半分がアパレルと服飾雑貨のファッション関連商材となる見通し。約620万人のワールドグループの会員基盤や、ワールドが強みとするアパレルの企画・製造のノウハウも生かし、5年後に売上高30億円を目指すという。

イオン傘下時代の約100億円の売上高と比べると控えめな数字とも受け取れるが、西川社長は「無理してマスの層を追うことはしない」と強調する。

再出発の知らせに元スタッフも再結集

出店先としては、中高年女性など従来の顧客基盤を想定して都市部の百貨店を中心とする予定。イギリスの自然をベースとした上品なブランドの世界観に共鳴するファンを開拓し、ニッチながら確実な需要を狙っていく。商品の品質をより高めて、以前と比べ価格帯もやや上げるようだ。

「事業を始めるとどうしても規模を広げたくなるが、人口減少の中で今は量を求めて成功する時代ではない。本当にローラアシュレイが好きな人をターゲットに、良い商品と良い店舗づくりを徹底したい」(西川社長)。

再出店の知らせに反応したのはファンだけでない。事業終了に伴い、他社へ転職するなどしていた元スタッフたちも同様だった。

今回ワールドが再出店を行うことが決まり、ローラアシュレイジャパン時代にバイヤーを務めた女性社員2人が立ち上げメンバーに加わった。店長経験を持つ複数の元スタッフも集まる見通しだという。商品開発や出店戦略などの方向性は一から練り直すが、西川社長は「顧客やスタッフを含め、ローラアシュレイの価値観や世界観に共感する人が多数いる中でスタートを切れるのは心強い」と語る。

もちろん、集客力の鈍化が叫ばれて久しい百貨店で、新たなファンを獲得しながら一定の売上高を確保していくことは容易ではない。イギリス本国のローラアシュレイも、ネット通販への対応の遅れなどにより売り上げ苦戦が続いている。

ライフスタイルや価値観が多様化する現代では、トレンド対応型ではなく、独自の世界観を発信して共鳴するファンを増やすブランドが存在感を高めつつある。老舗ブランドの国内での再出店は、独自性をどこまで追求することができるかがカギを握ることになりそうだ。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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