小林武史さんが本気で農場経営に乗り出すワケ 「ap bank」スタートから16年、変わらぬ思い

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――農業法人として、従業員に毎月お給料を払っていくことを考えると、ビジネスとして成り立たせる必要がありますね。

だからといって、お金儲けが目標ではなくて、有機農業におけるお金と人のあり方や関係性を変えたかったんですね。それで結果的に、山下さんのアドバイスや、伊藤の意見も取り入れながら、得意な野菜をある程度のユニットで安定供給する方向でやっていくことにしました。そうすることで、一部のお金持ちだけではなく、一般の人もスーパーで買えるようにしたかったから。

ただ、有機野菜の大量生産は日本では前例がありません。クルックの農業は、僕にとって長く壮大なる実験になるだろうと覚悟はしました。僕は経営のプロではありませんから、今もその実験は続いていますけど。

“いのちのてがかり”みたいなものも感じてもらいたい

――実験とはいえ、この秋にオープンした「KURKKU FIELDS」は、小林さんが「ap bank」設立以降に取り組んできたことの集大成的なプロジェクトです。

僕らが音楽でやってきたことは、魅力ある曲を作って、それを聴いた人に選んでもらうことです。未来も、本当にいいと思うものをみんなが選んでいかなければ変わらない。だから、マーケティングありきの既製品のようなものであふれかえっている、今の世の中の流れを変えなきゃいけないという危機感があるんです。

そのためにも「KURKKU FIELDS」は、ブレイクスルーしたい。経営ももちろん大事ですが、今は僕らが提案する魅力をしっかり伝えるための手段や方法をどうするかが先ですね。

――「KURKKU FIELDS」のテーマは「いのちのてざわり」ですね。あえて一番伝えたい魅力をひとつあげるとしたら何でしょうか?

僕が最近よく言っているのは、気持ちよさ、心地よさです。気持ちがいい食べ物、心地いい場所、気持ちのいい人の生き方みたいなものも含めて、五感で感じられる生きる喜びと言ってもいい。それは、人知のおよばない命の連なりで成り立っている、世界の美しさがあるからこそ感じられるものなんですよね。

その世界の中で僕たち人間が生きる意味をどう捉えるのか? 本質的なことを考えるきっかけとして、「KURKKU FIELDS」で“いのちのてがかり”みたいなものも感じてもらいたい。

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