トヨタ「ランクル」が圧倒的にタフな車である訳 未経験者ではドライバーの身がもたないほど
ボディカラーは明るい紺色。かなり使い込まれてはいたが、「長い間、風雨にさらされて頑張ってきました!」といった雰囲気が、よりタフさを押し上げていてカッコよかった。
伴走車は、フォード・ファルコン・ステーションワゴン。こちらはピカピカのレンタカー。当然ながら、ランクルと並べると弱々しく、タフな路面が多いエアーズロックへの長旅にはちょっと不安を抱かせた。
ちなみに、僕は3万キロくらいオーストラリアを走っているはずで、その8割方は砂漠。とにかく、砂漠を走るのが好きだった。
前にも、このコラムで触れたことがあるが、砂漠好きとはいっても、「月の沙漠」のイメージのような乾ききった砂漠は好きではない。
オーストラリアの砂漠は、まばらだが草木もあるし、草原的なところも多い。砂漠と言うより「土漠」といったほうが当たっている。
もっとも、草木とは言っても、とげとげしく毒々しいものが目立つのは、やはり過酷な環境に生きるものの宿命だろう。
まず目指したのはアデレード。寄り道せずに走れば1500キロくらいの距離。基本的には幹線道路を走り、ディレクターが「この辺りでちょっと撮ろう」と言うと幹線を外れて砂漠の道に入る。
砂漠の道とはいっても、フォード・ファルコンがお供なので無理はできない。で、「この辺りで撮ろう」となると、ランクルの単独行動になる。
ランクルのタフな振る舞いにスタッフも興奮
ディレクターとカメラクルーがランクルに乗り、「絵になる場所」まで分け入る。
ディレクターもカメラクルーも、この種の撮影は初めてで、ランクルのタフな振る舞いを目の前で見ると、「こんなことまでできるんだ!」と本当に驚いたようだった。
そして、カメラを回すのだが、回を重ねるごとに注文はエスカレートする。「ランクルならなんでもできる」と思い込んでしまったのだろう。もちろん、ダメなものはダメと断ったが、かなりきわどいところまでトライした。
アデレードからは進路を北にとりアリススプリングスを目指した。おおよその距離は1600キロ。オーストラリアの主要な幹線道路の1つだが、当時はまだ未舗装部分が多く、行き交うクルマの巻き上げる土煙に悩まされた。
とくに、鉱石や石油や家畜を運搬する、通称「100トン・トレーラー」の巻き上げる土煙は猛烈で、視界はほとんどなくなる。
しかも、3~4両を連結したトレーラーが100km/h近くで突進してくるのだから、その迫力は超弩級。すれ違うときの風圧もすごい。
初めてオートバイでここを走ったとき、その風圧で飛ばされ、転倒してしまった恐怖の経験がある。以後、バイクでは道路端に停止してやり過ごすことにした。