パール・バックの遺作が語る彼女の人生の意味 死後40年で発見された「終わりなき探求」

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中国がいずれ世界の大国となることを早くから予見していたパール・バック(写真:AP/アフロ)
パール・S・バック(1892~1973年)。生涯に実に80冊以上の本を書き、ノーベル賞、ピューリッツァー賞を受賞したアメリカの作家だ。生後3カ月で宣教師だった両親とともに中国に渡り、42歳まで過ごす。中国の人々を同胞とし、その文化を紹介、中国がいずれ世界の大国となると予見した。
その遺作『終わりなき探求』が2012年、死後40年たって発見された。彼女が最後に残したかったメッセージとは何か。遺作の読みどころやパール・バックという作家について、今年10月に発売された日本語版を翻訳した戸田章子氏が解説する。

40年の時を経て遺族の元に戻った原稿

あの『大地』(The Good Earth, 1931年)で知られるパール・バックの遺作である。作品は1973年に80歳で亡くなる直前に書かれ、その後原稿が紛失。終焉の地バーモント州から遠く離れたテキサス州の貸倉庫で発見され、遺族の元に戻った。当時、ニューヨーク・タイムズ紙上で大々的に報じられている。

『終わりなき探求』の序文で、失われた原稿のたどった経緯をバックの養子であるエドガー・ウォルシュが述べている。

「2012年12月に、テキサス在住の女性がフォートワースの貸倉庫に預けられていた荷物を買い取ったことを聞き知った。その時点まで倉庫の使用料の支払いはなく、法律上、倉庫会社は中身を競売にかけて処分することができたのである。

買主が中身を確認したところ、ほかのものに混じってパール・バックの小説の手書き原稿とおぼしきものが見つかった。300枚を超える原稿には、タイプ打ち原稿が添えられていた。女性は原稿を売る意向を示し、交渉の末にわれわれ家族が買い取った。

本書の原稿がいつ誰によってバーモント州のダンビーから持ち出され、どのようにテキサス州フォートワースの貸倉庫にたどりついたのかは未だ不明である」

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