「日本の鉄道の姿を変える」三セク社長の抱く夢 「今、ローカル線には追い風が吹いている」
それから「海線」、すなわち日本海ひすいラインのほうでは列車が単行(1両)の気動車で運転されていることから、地元の方が着席できる機会が少なくなっているという問題があります。そこでこの対策として、有料の指定席を設けようかなと考えています。
これは地元の方の利便を考え、駅の窓口のみで座席指定券を発売します。そして例えば70歳以上の高齢者の方には、会員証を発行して、無料とします。指定席は空いていれば、誰が座っても構わない。ただし、後から指定券を持っている人が来たら席を譲るということをルール化する。この方式はいすみ鉄道で定着しましたし、JRでも通勤ライナーなどで導入が進められています。このやり方を完全に定着させたい。
――有料の指定席であるけれども、高齢者であれば無料ということですね。指定券を発券する手間が増える形にはなりますが、わかりやすいルールだと思います。
駅への設備の新設、新しいサービスの運用開始を、運賃の値上げと同時に行います。糸魚川から直江津まで40分かかりますから、やはり高齢のお客様には着席していただきたい。このプランを営業サイドに提案してみたところ、みな興味を持ってくれました。仕事が増えるからやめようといった者はいませんでした。
ムーブメントをつくることが大事
――鳥塚さんがいすみ鉄道の社長時代、同線の国吉駅で駅弁の販売を行われたことには驚かされました。近くに食べ物屋さんはいくらでもあるのに。でも、好評でした。
大切なのはムーブメント。動きを作ることです。そんなことをして何になるの?ではなくて、とにかくやってみる。そのムーブメントを起こすことが、公募社長の仕事であり、そして1つのビジネスが成功すれば、そこから日本の鉄道の姿が変わってゆくのです。
今はスイッチバック駅が観光資源になる時代です。えちごトキめき鉄道は、オセロというゲームにおける「角のマス」だと思っています。そこの色が変われば、あとは全部の色が変わってゆく。
――信越本線と北陸本線の接続点にあるのだから、やはり重要な位置にあると思います。
鉄道の使命は、地域と地域を結ぶことにもある。第三セクター鉄道への転換後は、レールこそつながってはいますけれど、運転系統は途中で幾度も切られている。これももったいない話だなあとは感じています。妙高の人も高田の人も「昔は乗り換えなしで長野まで行けた」と皆おっしゃっています。
これは他社とも協議して、直通運転ができる列車は直通させてみたい。輸送シェアの大半を車が占めている時代に、実際にどれくらいのニーズがあるのか、そのボリュームを正確に見極める必要はありますが、ただ単に県境で鉄道を切ってしまうのではなく、もう一度、鉄道が持つ可能性を探ってゆきたいですね。
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