ネットで生卵がメチャメチャ売れる驚きの理由 古い常識にとらわれない価値観が単価を上げる

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いうまでもなく、客単価は高いほうが嬉しいものですが、単純に値上げをするだけでは消費者の理解を得られず、かえって売り上げが悪化する可能性があります。そこでおすすめしたいのが「合わせ買い」の促進です。主力商品が3000円だとしたら、それ単体ではなく1000円の関連商品との「合わせ買い」を提案する。これで客単価を4000円に上げることができるうえ、ユーザーが合わせ買いをするかどうか検討する時間の分だけ、滞在時間も延ばすことができます。

とはいえ、なんでもかんでもまとめて売ればいいというわけではありません。合わせ買いを成功させる第1のポイントは「価格」です。合わせる商品の価格は、メイン商品の3~4割がベストで、それ以上になると高すぎて、合わせ買いしようとは思わなくなります。メイン商品より高い商品を提案するなどもってのほかで、それはもはや合わせ買いとはいえません。

第2のポイントは「ストーリー」です。例えば「もつ鍋」と一緒に「野菜セット」もいかがですか、と提案するのはストーリーとして自然なので受け入れられますが、「もつ鍋」と「お刺身」では、合わせ買いをする必然性が薄くてユーザーも購買意欲がわきません。

合わせ買いを促すキャンペーンを打つ際にも、ストーリーは重要です。以前、楽天で「1000円のものを3つ買ったらポイント2倍」という企画がありましたが、ほとんど反響はありませんでした。なんのストーリーも用意せず、単に「今まとめて買うとお得ですよ」というだけでは、消費者の心に響かないというわけです。

つまり合わせ買いの成功率を高めるには「3000円のもつ鍋に1000円の野菜セット」「7000円のビール飲み比べセットに1500円のグラス」というように、値段とストーリーのバランスが取れていることが大事なのです。

リコメンドでは客単価は上がらない

なお、合わせ買いと「リコメンド」は似て非なるものなので、分けて考える必要があります。合わせ買いが、1回の買い物かごに関して「こちらも一緒にいかがですか」と提案して客単価を高める施策であるのに対して、リコメンドは「次回はこちらもご検討ください」と提案してリピート購入をうながす施策です。

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具体的に言えば、合わせ買いは「もつ鍋を買うなら、野菜セットも一緒にどうですか?」という提案であり、リコメンドは「来週は水炊きにしませんか?」と、同質のモノをべつの機会に買うことを提案するわけです。

リコメンドには、合わせ買いのようなストーリーは必要ありません。価格も、今回買ったものより高くても安くてもいい。購入履歴などに基づいて、その人がよく買うジャンルの商品をおすすめできればそれでOKです。購入後のページなどに表示されるリコメンドは、基本的にはシステムが自動で判断するので、それに任せておけば間違いありません。

ストーリー性のある「合わせ買い」を上手に利用することで、客単価は思ったより簡単に上げることができるのです。

大原 昌人 ダニエルズアーク代表取締役、元「楽天市場」プロデューサー

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おおはら まさと / Masato Ohara

慶應義塾大学環境情報学部卒業。楽天株式会社に入社。少数精鋭のクリエイティブ部門に配属。楽天の心臓部「購買データ」を自由に分析する権限を得る。楽天市場全体のビジュアルを統括するWebプロデューサー・ディレクターとして、フリマアプリ「ラクマ」や、年間100億円規模の流通を生み出す「6時間タイムセール」など、数々のヒット企画に参画する。2017年からは、国内最大級の流通額を誇る「楽天スーパーSALE」の総合プロデューサーに最年少で就任。2018年、株式会社ダニエルズアークを設立し、代表に就任。「誰でも夢が見られるチャレンジの場を作る」ことを掲げ、全国各地に活躍の場を広げている。

 

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