写真に騙されるな!アドビが打ち出した「対策」 写真も動画も「加工」されたものかもしれない

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iPad版PhotoshopでApple Pencilを用いてiPhoneをなぞっただけで、先程の人工芝の写真が作り出された(筆者作成)

さらに、写り込んでしまった白線も邪魔だと思えば、白線も同様に消すことができる。こうして、人工芝だけの背景パターンが作り出される。このように作り出された人工芝のパターンをスライドやデザインに活用することができ、便利だと考える人もいるだろう。

その一方で、最初から人工芝に白線だけの写真を見せられれば、そういう場面があったのだ、という理解以上は生まれない。それは元の写真とは異なる事実を伝えることになる。

もしiPhoneも白線も邪魔なら、どちらもきれいに削除することができる(筆者作成)

もしニュースやSNSに公開された写真で、いるはずの人がそこにいなくなっていたり、逆にそこにいなかった人がいたことになっていたらどうなるだろうか。写真を通じた情報の操作はいかようにも可能であることを表している。

「写真」なのか、作られた「画像」なのか。また色味などを最適化した「調整」なのか、写真から不要なものを取り除くような「編集」なのか。その写真をどう受け取るかを判断するための材料が圧倒的に足りておらず、Adobeが今回取り組もうとしているポイントとなる。

ここまで進んでいるAdobeのAI技術

しかし話はそこまで単純ではない。われわれは現在のクリエイティブアプリが、写真やビデオをどこまで「編集」できるのか、詳しく知らないからだ。Adobeは人々の創造性を解放するようなツールを作っており、その先端を知っておくことが早道だ。

Adobeは毎年、同社のクリエイティブ製品にAI「Adobe Sensei」の技術を盛り込んできた。AdobeのAI学習には、クリエーターがどんな作業をしているのかという理解、コンテンツそのものの理解、体験の理解という独自の非常に競争優位性を持つデータを活用している。

例えば先程のiPadでのデモでご紹介した、「写真から特定のオブジェクトを削除し、周囲の背景で補完する」という作業は、過去のPhotoshopでクリエーターが1時間かけて行っていた「作業」だった。それを3秒で済ませるマジックを搭載する理由は、クリエーターを作業から解放し、より創造性に時間を避けるようにするというコンセプトを追求してきた結果だ。これが、Adobeがクリエーターから圧倒的な支持を得る大きな理由だ。

しかし、そのAdobe Senseiの技術は、われわれが考えるより程遠いところまで来ている。

写真と同じ原理でビデオから特定の被写体を消し去り、周囲を分析して自動的に背景を補完する技術は、すでに数年来、Adobe MAXの2日目に開催される先端技術発表会「Sneaks」(スニークス)でその取り組みが明らかとなっており、2019年版のビデオ編集アプリAfter Effectsに実装された。

まだある。Photoshopには顔を認識して、広角を上げたり、目尻を下げたりする表情の編集が可能だ。これとアニメキャラクターの口の動きを音声と同期する技術を組み合わせれば、写真から、その人がしゃべっているビデオが作り出せる。さらに音声合成技術を用いれば、話していないことを実際にしゃべったようなビデオが作り出せる。

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