劣等感を「バネにする人」「無駄にする人」の大差

「待つだけで行動しない人」に成功は訪れない

中国を代表する巨大企業「アリババ」の創業者であるジャック・マーの有名な講演での言葉に、こんなものがあります。

何かを無料プレゼントすると「これは罠だ」と非難する。
「少額投資で大丈夫」というと、「じゃあ、儲からないじゃん」と文句を言う。
「多額の投資が必要」というと、「そんな金ない」と文句たらたら。
「新しいことに挑戦しよう」と誘うと、「経験がないから無理!」と諦める。
「伝統的なビジネスだよ」と言うと、「じゃあ成功しないね!」と却下される。
「新しいビジネスモデル」と言うと「ああ、MLM(マルチレベルマーケティング)か」と決めつける。
「店を経営してみたら?」と言うと、「自由がなくなる!」と主張する。
「起業してみたら?」と言うと、「プロじゃないから無理」と受け入れない。

私の結論は、言い訳を熱弁している暇があったら、もっと素早く行動に移せばいい。いつも考えてばかりよりも、何か実際にやってみたらどうか。ずっと待っているだけで自ら何も行動しない人は成功しないのです。

ジャック・マーという人は、言葉遣いが過激で傲慢な物言いをすることもあって批判されることも多いのですが、言っていることの中身は真っ当で、また、他人への愛のある人だと僕は感じています。

さて、このジャック・マーの「檄(げき)」は、よく「考えるよりも行動せよ」と要約されますが、僕はむしろ、「人の可能性を潰しているのは、自分自身である」ということを言っているんじゃないか、と解釈しています。

私たちは自分の人格に日々投資をしている

僕らは、自分の性格を変えることができない、と思い込んでいます。いわば「私はこんな性格である」というデータが自分の中に書き込まれていて、それは二度と上書きすることができない状態で固定されている。そんなイメージで、自分の性格というものを捉えています。

劣等感というのも同じで、一度抱いた劣等感というのは、なかなか取り払えないものだというふうに、なんとなく思い込んでいる。「モテない」「人付き合いが苦手」「勉強ができない」「集中力がない」……、そういう自分はなかなか変わらないものだ、と思い込んでいるわけです。

これに対して、アルフレッド・アドラーは、人は日々、自分のパーソナリティに対して「投資」をしているのだ、と言っています。つまり、一見固定化されて、変わることがないように思える自分の性格、自分の行動傾向というものは、日々の一つひとつの行動によって上書きされ、強化されている、ということです。

例えば、「おはよう」とあいさつを交わすとくに、なんとなく相手と目を合わせずに、そらしてしまった。この1つの行動だけで、自分の人格に「人と明るくコミュニケーションをとることができない」という新しいページを上書きしている。日々、自分のパーソナリティーに対して投資する、というのはそういうことです。

僕らは毎日、自分の人格、自分の劣等感、自分の個性に投資をしている。あなたがあなたでいるのは、あなたが主体的に書き込んでいるからだ。裏を返せば、その「投資」の方向性を変えることができれば、性格というのはその瞬間から、少しずつ変化できる、ということでもあります。これが、アドラー心理学の基本的な考え方です。

そういう意味で、「ずっと待っているだけで自ら何も行動しない人は成功しない」というジャック・マーの言葉は正しいと僕は思います。ただ問題は、多くの人は、「どこに向かって行動すべきか」という方向性が見えていない、ということです。だからこそ僕らは、根拠のない劣等感に頭を悩まされてしまうのです。

自分の劣等感の実態を正確につかみとることができた人は、ようやく、自分の進むべき道を見いだすことができるでしょう。自分が何に対して、どのような劣等感を抱いているのか。その具体的な対象が見えてくれば、自然と、自分が本当はどうなりたいのか、どこに向かっていきたいのか、ということが見えてくるからです。

この段階まで分析することができれば、劣等感はきっと、人生においてすばらしい「羅針盤」として機能してくれるようになるはずです。

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