保護犬を迎え入れた漫画家が語る「ペットロス」 心を開かない「元野良犬」が救ってくれた

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ペットロスという言葉があるくらい、犬や猫などを亡くしたときは深い悲しみに襲われる。私の場合は無自覚だった。オカメがお骨になった2日後、私の前歯が欠け落ちて、初めて思った。どうやら私は弱っているぞ、と。1カ月間コンビニの食事をしていたせいだけではないと思う。

オカメが大病をしたら惜しみなく使おうと考えていた貯金も、ぼーっとしながらぽいぽいと下ろした。治療も延命もできなかったから、たくさんあった。20万円くらいを服と化粧品に使ったら、あと欲しいものはなくなった。

私はもっと一緒にいるつもりだったのだ。オカメの目が白内障で白くなったり、顔に白髪が出てくるまで、一緒にいるつもりだった。10歳じゃそこまでいかない。短くたって、あと2年は一緒にいられると思っていた。

2匹目のギーに救われた

ズドンとあいた心の穴に、入ってきてくれたのは、やはりギーだ。別に寄り添ってくるわけじゃない。ギーはまだまだ人間が怖い。

家では縮こまっているギーも、散歩に出ると大はしゃぎ。元野良の血が騒ぐのか外にいると楽しそうだ(筆者撮影)

いくらこっちが弱っていようと、毎晩オカメを思い出して泣いていようと、怖いもんは怖い。でもギーは、お散歩だけは好きだった。

オカメとサヨナラした日も、次の日も、その次の日も、ギーを連れて公園に行った。朝は私が、夜は夫が。しばらくは私も夜ついていった。ギーは本当に楽しそうで、それがめちゃくちゃかわいかった。

私は、「かわいい」という気持ちに勝るものを知らない。「悲しい」も「寂しい」も、全部「かわいい」の中にあると思った。

オカメがお骨になったとき、私と夫はすぐに頭蓋骨をなでたのだ。あんなにかわいい頭蓋骨を、ほかに知らない。死んだって、犬はずっとかわいい。

『いとしのギー』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

ギーがいなかったら、それを忘れようとしていたかもしれない。犬がかわいいってことを、夫と私だけで思い出すのはつらいから。欠けた歯を治して、分けていた貯金通帳は生活費とゴチャゴチャになって、もうよくわからなくなっている。オカメと別れてもう1年。早いとも遅いとも思わない。ただひたすら、今もオカメはかわいいなぁと思う。

ギーとも、もう1年半だ。家の端っこで小さくなっていた野良ちゃんが、今では名前を呼ぶと寄ってくる。5回に1回は。

おおが きなこ 漫画家・イラストレーター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

Kinako Ooga

1984年生まれ。SNSやWEBを中心にさまざまな漫画を発表している。人の心の些細な葛藤をしつこく掘り下げていくのがスタイル。座右の銘は「嘘を描くな」。現在は、元野良犬の「ギー」と新たに加わったシーズーの「マル」の2匹と一緒に暮らしている。著書に『今日のてんちょと。』がある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事