日立がホンダ系部品3社を傘下に収めるわけ 自動運転時代に覇権を握ることができるか

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自動運転時代になれば、モーターやインバータ、ステアリングなどすべての部品がデジタル制御され、システム化されていく。裏を返せば、ハード中心で戦ってきたホンダ系の自動車部品会社は、ITソフト技術を持つ日立グループのような会社と立場が逆転する可能性がある。

日立幹部は「自動車に搭載された、山のようなソフトウエアをしっかり管理することでデータがたくさん上がってくる。それを分析して新たなサービスにつなげる」という青写真を描いてみせる。ハードを手に入れるのは、あくまでもデータを吸い上げるための必要ツールと見ているわけだ。

具体的には、特定の自動車部品のシェアをまず引き上げ、収益性を向上させたうえで、自動運転やコネクテッドなどの次世代車が本格的に到来したときの覇権を握るというものだ。

日立全社で推進中の「ルマーダ」プロジェクト

実際、日立製作所が今、全社で推進しているのがIoT基盤「ルマーダ」で、自動車への展開も模索している。

ルマーダとは、「データ」と「イルミネート」(光を照らす)を合わせた造語で、東原敏昭社長の肝いりで2016年からスタート。製品などにセンサーやカメラを搭載し、そこから得られたデータをAI(人工知能)などを活用して解析・判断。それを現場にフィードバックする仕組みだ。

日立はもともと幅広い製品群を持っており、その保守運用から制御技術のノウハウまで豊富だ。ルマーダはそれらをつなぐ重要なプラットフォームと位置づけられている。

現在、「レッツ!ルマーダ」の掛け声のもと、単なる機器売りから顧客課題を解決する集団へ日立は変わろうとしている。ルマーダで相乗効果が見込めない事業や、収益の変動が激しい事業は売却。ここ数年、日立物流や日立キャピタル、日立工機、日立国際電気などのグループ名門企業を次々と売却し、リーマンショック直後に約20社あった上場子会社は、日立化成、日立金属、日立建機、日立ハイテクノロジーズの4社となった。このうち、日立化成は売却を進めており、他の3社も今後3年以内に本体に取り込むか、売却かを決める見通しだ。

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今回、自動車をコア事業と位置づけた格好だが、安定した収益につながるかは不透明だ。ボッシュやコンチネンタルなどの世界の大手自動車部品メーカーは買収を繰り返し、次世代覇権争いは激しい。日立幹部も「ボッシュやコンチネンタルと差別化するには事業の絞り込みが必要。彼らの研究開発費率は業界平均よりも相当高い。電気自動車や自動運転支援で全面戦争するなら、研究開発費がいくらあっても足りない」と認める。

一方、日立の強みは「グループ全体で研究開発の大きなポートフォリオを持ち、ソフトウエアやAIなどをフルに使うことで、自動車部品専業会社に比べて効率よく研究開発ができる」(同幹部)ことも事実。グーグルやアップルなど自動車分野に攻め込んでいる中でどう戦うのか。日立がこれまでにない次元に足を踏み入れたのは確かだ。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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