資生堂、アメリカで「900億円M&A」の勝算 スキンケア社買収でクリーン製品市場に進出

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2018年3月の新中期経営計画発表時の魚谷雅彦社長(編集部撮影)

「今回の買収案件については、かなり前から興味を持って検討していた」

化粧品国内最大手・資生堂の魚谷雅彦社長は10月9日、アナリスト・機関投資家向け電話会見でそう力を込めた。

資生堂はアメリカで高価格帯スキンケアブランドを展開するドランク・エレファントを約900億円で買収する。同社株を100%取得し、12月までに買収を完了する予定だ。

現地報道によれば、英蘭ユニリーバやアメリカのエスティローダーといった世界の名だたる消費財、化粧品メーカーもドランク買収に意欲を見せていたが、資生堂が勝ち取る結果になったという。

アメリカで拡大するクリーン製品市場

ドランクは2012年に女性起業家のティファニー・マスターソン氏が創業。2019年12月期の売上高は約135億円(前期比66%増)を見込んでいる。

ドランクの主力はスキンケア製品で、肌に刺激を与えない原材料を用いていることが特徴だ。アメリカでは、こうした肌や環境に配慮した「クリーン製品」が拡大している。資生堂の調査によると、2018年から2022年までの同製品市場の年平均成長率は9%と、高い伸びが予測される。

資生堂がドランクを買収した理由は、最大の悩みの種であるアメリカ事業立て直しの武器とするためである。2010年に現地化粧品会社のベアエッセンシャルを約1800億円で買収したが、同社は2度ののれん減損に踏み切り、2013年3月期に286億円、2017年12月期に707億円の特別損失をそれぞれ計上した。

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