入館者大幅増、鉄道&おもちゃ美術館の合わせ技

列車から始まるユニークなミュージアム体験

鳥海山木のおもちゃ美術館の「もりのあそびば」。廃校となった小学校の体育館を活用した(筆者撮影)

人口7万5000人の市に、1年間で10万人あまりの人が押し寄せた。

秋田県由利本荘市に、2018(平成30)年7月1日にオープンした「鳥海山木のおもちゃ美術館」のことである。オープン当初の目標入場者数は年間3万5000人。実に目標の3倍だ。

この美術館は、由利本荘市の郊外にある。廃校となった小学校の木造校舎を活用した多世代交流施設で、秋田県産の木材を使った、さまざまな木のおもちゃに触れて遊ぶことができる。

だが、由利本荘市は、東京や仙台といった大都市から遠く離れた日本海の小都市。なぜ、これほど多くの人が訪れているのだろうか。

「木育」がヒントに

それは、何度でも訪れたくなるコンテンツを持続可能なコストで実現し、さらに地域の鉄道と一体化して列車の旅をミュージアム体験に組み込むという創意工夫が幅広い人々に支持されたからだ。

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「鳥海山木のおもちゃ美術館」の建物は、1954(昭和29)年に鮎川村立鮎川中学校として竣工した校舎だ。明治末期から大正時代の建築様式を残す貴重な木造校舎で、1970年から鮎川小学校になった後、2004(平成16)年に廃校となるまで使用された。2012(平成24)年には、国の登録有形文化財にも指定された。

「この貴重な校舎を残し、後世に伝えたい。その思いはあったのですが、どうすればよいのかずっとわかりませんでした」

そう語るのは、由利本荘市の鳥海山木のおもちゃ美術館統括担当である佐藤弘幸氏だ。廃校から10年、文化財に登録されたものの、なかなか有効な活用法が見つからなかった。

そんな由利本荘に、「木育」という言葉が伝わったのは、2014(平成26)年。地域を支える人材を育成するための勉強会でのことだった。

木育とは、2006(平成18)年に閣議決定された林野庁の事業で、日本が持つ国産木材の文化を暮らしに取り入れ、木の温もりがある生活を子育てに生かそうという取り組みだ。由利本荘市は、秋田市の総面積を超える918km2もの森林を有する森の町。東北を代表する木造校舎と木育を結びつければ、地域らしい価値を生み出す事業ができるのではないか。

「そこで、木育事業の先行事例として東京都新宿区の”東京おもちゃ美術館”を訪れたのです」

そこで、佐藤氏ら由利本荘市の人たちは、「なんだこれは?」と驚くことになる。

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