三セク「しなの鉄道」が黒字を出し続ける秘訣 新型車両を大量導入、今後は軽井沢再開発も
――軽井沢には訪日外国人客が多いですが、鉄道利用に結びつけられますか。
長野県全体の観光客の入込数は、国内からは微減しているが、外国人は2014~2018年の県内外国人延べ宿泊数が2.3倍増と大きく伸びている。とくに台湾とオーストラリアからの来訪が多い。台湾人は軽井沢に数多く来ているので、そこから上田地区に足を運ぶ人を伸ばしたい。またオーストラリア人は野沢温泉や妙高高原のスキー場を目指してやってくる。それを沿線観光に結びつけたい。
当社には台湾出身の女性職員がいて、SNSを通じて彼女の視点で積極的に発信している。台湾鉄路管理局と友好協定も結んでいて相互交流もあり、PR活動も行っている。観光列車「ろくもん」は海外にも通用する優れたコンテンツであり、2018年には235人の外国人利用客があった。今後も、主に東南アジアやヨーロッパに向けて積極的に展開していきたい。
通勤客の掘り起こしで収入増狙う
――沿線人口が減っていく中で、旅客運輸収入の見通しは?
少子化ということもあり通学利用の減少はやむをえないが、通勤利用についてはマイカーから電車への転換を図っていきたい。働き方が変化すれば、時間が不規則でマイカーでなければ対応できない状況が改善され、環境に対する意識が高まれば鉄道に目が向けられるだろう。
2018年に通勤実態調査を行ったところ、駅から800mを分岐点に、鉄道を利用するかしないかが分かれるということがわかってきた。今後は、駅から800m以内の企業に働きかけて、鉄道通勤を促進していきたい。
5年前、北陸新幹線が金沢まで延伸され、並行在来線の長野―妙高高原間もしなの鉄道が運営主体となり、北しなの線として運行している。この線は豪雪線区であるうえに人口減少が県内他地域より一層進み、経営が厳しい。
しかしそれを沿線の行政がよく理解して、駅周辺にある自治体所有の駐車場を無料にするなどで鉄道利用を促している。ボランティアが3歳児らの集まるイベントを実施している三才(さんさい)駅、ヤギ駅長の牟礼(むれ)駅など、地元のほうの取り組みも盛んだ。
――観光列車「ろくもん」は好調ですね。
「ろくもん」は水戸岡氏デザインの車両空間と、食事を楽しんでいただくことに特化している。軽井沢から出発するのは洋食、逆の長野発は和食。月1~2回、夜に「信州プレミアムワインプラン」も運行している。また、日本三大車窓の1つ姨捨駅へ乗り入れる「姨捨ナイトクルーズ」では、善光寺平の夜景を楽しんでいただいている。
「ろくもん」はスピードを出さず、時間をかけて列車を楽しむ。また休日に運行する新車両のライナーは、速く快適に移動して、目的の観光地で楽しんでもらう。明確に目的を分けて運用していく。
現在は、2大プロジェクトをはじめとしたさまざまなアイデアを仕上げていくステージに入っている。新たに何かを始めるというより、着実に実現していくことに注力したい。その主役となるのは、社員一人ひとり。社員が自分で考えて動いていけるよう、経営者として環境を整えていきたい。
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