アップルが健康管理から「医療」へ踏み込む理由 「ユーザーからの手紙」がきっかけだった

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それゆえにアップルが、スマートウォッチというジャンルを通じてメディカル領域に踏み込もうとしている理由に興味があった。

「最初のApple Watchは、日々の活動を記録するだけの簡単な情報しか記録できませんでした。これは“ウェルネス”の領域です。われわれがやりたかったのは、人々により活動的になってもらうことでした。しかし世代を重ねるにつれ、ヘルスケアの領域をカバーするようになり、現在はメディカルの業界と結びつくようになっています。

しかし、こうした流れを最初から予測していたわけでありません。Apple Watchのユーザーがくれた手紙が、自分たちの製品により大きな可能性があると気づかせてくれたのです」(ウィリアム氏)

アップルが提案した3つのアクティビティリングを完成させるという、当初は遊びの提案が、「体重が減った」「より活動的になった」という手紙から、よりモチベーションを高めるアイデアの実装に注力するように。また心拍数の異常を感じ、Apple Watchでその数字を確認したうえで医療機関に連絡したことで命が助かったという手紙もあった。

「命が助かった、標準体重を取り戻して人生が変わった。そういった手紙を受け取り、ヒトの命に関わる情報が得られるデバイスとしてのApple Watchに、自分たちが想像していなかった大きな可能性を感じました」とウィリアムス氏は話す。

スマートウォッチ市場全体の51%を販売

Apple Watchは、アクティビティトラッカーと呼ばれるスポーツ計測用や健康管理用のバンド、あるいは他社のスマートウォッチよりも遅れて登場した製品だ。ライバル製品でも、同じように検出できるだろう。

しかし初代モデルでは800万本、2代目は1300万本以上を販売したと言われる。調査会社NPDによると、2018年トータルの実績では2250万本を販売。これはスマートウォッチ市場全体の51%に相当する。

毎日使う日常的な道具としてApple Watchが多くのユーザーを獲得したことで、スマートウォッチというジャンルの製品の可能性が開けたのだ。

“可能性が見えた”ことでアップルが取り組んだのは、大学病院や公的研究機関などとの協業である。アップルはユーザーのプラバシー情報を自社では保持しない方針を徹底させている。Apple Watchで得た情報はアップルには送信しないが、本人が望むのであれば、健康に役立つ情報として研究機関にデータを提供し、より役立つ機能へとつなげていくこともできる。

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