日本人が知らない「トランプ大統領」の頭の中 大事なのはアメリカよりも「自分の損得」
トランプ大統領は2020年の大統領選にも出るという。もし再選されたら、アメリカ、そして世界はまた4年間この男に振り回されることになる。
トランプ大統領の熱狂的な支持者
ここまでひどいアメリカ大統領を私は知らない。だが、それでも彼を支持するアメリカ国民は一定数いる。それは、トランプ大統領が、自分の支持者が聞きたいことをうそ(フェイク)でも言い続けるからである。ポスト・トゥルースと呼ばれるこの現象は、客観的な事実が軽視もしくは無視され、感情的な訴えのほうが政治的に影響を与える状況を指す。
トランプ大統領の熱狂的な支持者は、ラストベルト地帯のプアホワイトだ。トランプ大統領が彼らに向けて「メキシコとの境に壁をつくって不法移民を入れないようにして、あなたたちの仕事が奪われないようにする」「中国からの輸入品に関税をかけて、君たちのつくる製品の競争力を高めてやった」などのことをいうと、たとえそれがうそであっても、そういう話を俺たちは聞きたかったのだと熱狂するのだ。ある統計によれば、トランプ大統領は1日平均6回うそをついているという。
とにかく、そういった熱狂的なトランプ大統領の支持者が、アメリカ国民の25%も存在するのだ。2018年11月に行われたアメリカ中間選挙の投票率が50.1%だから、トランプ大統領の支持者がこぞって投票に行けば、間違いなく多数派をとれる。つまり、大統領再選は十分ありうる話なのである。
トランプ大統領は、口を開けばアメリカの労働者は不法移民に職を奪われているというが、これは彼の認識不足である。IMFの統計によれば、2018年10月の段階でアメリカの失業率は3.78%とほぼ完全雇用状態なのだ。
また、中国からの輸入品に25%の関税を課したところで、中国に進出している企業がアメリカに戻り雇用を生み出してくれるようなことは絶対に起こらない。なぜなら、アメリカにはそもそも部品がなく人もいないのだ。
iPhoneを中国で製造する鴻海科技集団(フォックスコン・テクノロジー・グループ)は、成都で100万人の労働者を雇用している。それだけの頭数をそろえないと、アップルのオーダーに対応できないからだ。では、すでに完全雇用状態のアメリカでこれだけの工場労働者を集められるかといえば、無理な話である。
中国が為替操作で通貨安に誘導しているためアメリカの輸出競争力が落ち、アメリカ人労働者が割を食っているとトランプ大統領は主張するがこれに根拠はない。これを言っているのは、トランプ大統領の経済アドバイザーを務めるカリフォルニア大学アーバイン校のピーター・ナヴァロ教授だが、彼が根拠としている製造業を前提とした経済モデルが古すぎるのだ。
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