マッキンゼーが指摘する「日本の鉄道の改善点」 現在の鉄道業界に足りないものは何か?
日本は鉄道会社各社が自前主義をとっていて、保守も運行もインフラ建設も自前で行っているが、この状況をスターン氏は非効率だと考える。「各社はデジタル技術を使って新しいモデルを構築する必要がある」。
では、デジタル技術で解決できる日本の課題とは何か。この点について、「労働力の問題だ」と語るのは、日本支社で世界各国の交通・運輸・物流を担当するシニアパートナーのデトレフ・モーア氏である。「日本の鉄道会社は大量退職の時代を迎えようとしている。新規雇用で代替するだけではなくデジタル技術による自動化によって、安全面や顧客サービス水準をキープしつつ、人手を減らすことが必要だ」と話す。
デジタル化の時代においては、「自前主義にこだわらず、ソフト開発やビジネスモデル構築などでは外部の人材活用も重要だ」という。また、「時間をかけて完璧に行うだけではなく、トライ・アンド・エラーの考え方を取り入れてスピード感を重視した仕事のやり方も必要だ」という。むろんスピード感を重視しつつも安全性の維持が必要であることは言うまでもない。
最近は、故障が起きてから機器交換などのメンテナンスを行うのではなく、故障が起きる前にメンテナンスを行うCBM(予防保全)という考え方を鉄道の保守業務に取り入れ始めている。この動きについても、「日本の鉄道は世界の流れと比べると遅れている。航空業界などCBMが進んでいるほかの業界の動きも参考にするべき」とスターン氏は話す。
最近目立つ、鉄道車両の台車に亀裂が入るトラブルなども、理屈のうえではCBMを活用すれば発生前にメンテナンスを施すことができるはずだ。
新時代の鉄道ビジネスモデルは
世界の鉄道業界の事例や、他産業の事例に精通したマッキンゼーの知見には、日本の鉄道業界が参考にできる部分もいろいろとありそうだ。ただ、気になるのは、マッキンゼーのコンサルティング料だ。
この点については、「以前は固定フィーだったが、最近は成功報酬モデルも導入している」(小松原氏)。売り上げアップやコスト削減で成果が出たら、その一部がマッキンゼーへの報酬になるわけだ。
日本は人口減少時代に突入しており、現在は人口増が続く首都圏も早晩、人口減少が避けられない。これまでのビジネスモデルが通用しない時代に入りつつある。同時に急速に進化するデジタル技術は経営改革の大きな武器になる。マッキンゼーの言うとおり、新しい時代にふさわしい経営手法を取り入れた鉄道会社が業界の勝ち組になるのかもしれない。
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