名物アニメキャラ「声優交代」の知られざる苦悩 栗田貫一、山寺宏一、冨永みーなの心境
この流れを単に「物まね」があったからルパン三世を継承できた、というふうに捉えると間違ってしまう(しかし、そういう人も案外多いかもしれない)。
例えば栗田は、物まねは物まねであって、声優の仕事とは違うもの、と語っている。また、栗田自身も、石川五エ門、峰不二子、銭形警部のキャストが一新された『ルパン三世 血の刻印 〜永遠のMermaid〜』(2011)を経て、次第に「ルパンを“ルパン”として演じることがわかってきた」(前出インタビュー)と語っている。つまり栗田の場合、受け継ぐきっかけとなった物まねはあくまで入り口であり、それが「ルパンを演じること」のゴールではなかったのである。
「銭形警部」「古代進」継承した山寺宏一
筆者はこれまでに『声優語〜アニメに命を吹き込むプロフェッショナル〜』(一迅社)、『プロフェッショナル13人が語る わたしの声優道』(河出書房新社)という2冊の、声優インタビュー集を出している。それらインタビューの中にも、“おなじみキャラクター”を継承することの難しさについて、声優が語っている部分がある。
例えば『声優語』所収の山寺宏一インタビュー。山寺のインタビューは、栗田がルパン三世について語った部分と共通点が多い。
山寺は、2011年から『ルパン三世』で銭形警部(前任は納谷悟朗)を現在まで担当しているし、映画『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』(2009)などで主人公・古代進(前任は富山敬)を継承している。
山寺は「古代進にしろ銭形にしろ、僕自身、富山敬さんや納谷悟朗さんのお芝居を見て育ってきた人間ですから、違和感がないといえばウソになるんです。自分がやらずにすんで、オリジナルの方がずっと演じてくださる状況があれば、それが一番いいわけで」と前置きしたうえで、銭形を演じるに当たってどこまで納谷を意識した演技をするかについては、次のように説明する。
「最初は視聴者を混乱させないためにも、少しは似ているトーンが出せればと思いました。もちろん、似せて不自然に聞こえるならダメなんですが、自分の中でちょっと近づける作業をしないと、どうしても落ち着かない部分もあって。
幸いスピンオフの『LUPIN the Third -峰不二子という女-』から今回の『ルパン三世』に至る間に、声をどこまで似せるかどうかじゃなくて、役柄の状況とお芝居をどうすればいいかということが、だんだんメインになっていきました」