欧州で「夜行列車復活」の機運、日本の鉄道は? 廃止した各国が運行再開検討、新規参入も
2015年限りで夜行列車の運行そのものがなくなったオランダは、オーストリア鉄道と協議し、数年以内にアムステルダムへの夜行列車乗り入れを再開させる方向で調整を進めている。
オランダは2015年までシティナイトラインが乗り入れていたが、運行区間に新信号システムが導入された際、その信号システムに対応した機関車をリースする費用を削減するため、列車の運行を国境手前で打ち切ってしまった。そして翌2016年にはシティナイトラインそのものが消滅し、以降オランダに夜行列車は運行されていなかった。
オランダにとって不本意だったのは、運行中止の原因が利用客数の減少ではなくインフラに起因するもので、決して需要がないわけではなかったことだ。このため、ナイトジェットを運行するオーストリア鉄道へ再度乗り入れを打診することになった。このケースでは、オランダ鉄道が寝台車を保有するわけではないため、ダイヤや運行区間などの詳細が固まり次第、すぐにでも再開可能となる。
新規参入を計画する企業も
一方で、新たに参入を試みようとする企業もある。ドイツの民間鉄道会社フリックストレインは今年6月、フランス市場への参入計画を明らかにしたが、その中にはパリ―ニース間の夜行列車運行が含まれている。
同区間には、かつて日本のブルートレインの語源になったともいわれている名列車「トラン・ブル(Train Bleu)」が走っていたが、高速列車TGVの運行開始とともに徐々に衰退、2017年に廃止された。
フランス国鉄はTGV路線網の拡大によって在来線の長距離列車を次々と削減したが、パリ―ニース間は現在も6時間弱の所要時間がかかるため、多くの利用者は航空機を選ぶ。だが、夜19時以降に発車して翌日の早朝に到着するダイヤであれば、航空機にも十分対抗できる。フリックストレインは、そこに目をつけたということだろう。
この近年の情勢が示すものは、ヨーロッパにはまだ、夜間移動の潜在的なポテンシャルが残されているということだ。その秘められた需要を今に至るまで掘り起こさなかったことは、鉄道会社側の怠慢ともいわれている。
実際、これ以上は赤字を増やすだけ、とさじを投げたドイツ鉄道とまったく同じ区間を引き継いだオーストリア鉄道は2年連続で黒字を計上し、前年を上回る収益を上げている。これでは、ドイツ鉄道は何をやっていたのかという話になる。
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