欧州で「夜行列車復活」の機運、日本の鉄道は? 廃止した各国が運行再開検討、新規参入も

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ナイトジェットは、クラスごとにきめ細かく用意されたサービスや料金体系、そして適切なダイヤ設定により、路線バスや航空機、さらには高速鉄道と十分戦えるだけの力があるということを世間に証明してみせた。

「ナイトジェット」の車内で配られるアメニティグッズ。充実したサービスも魅力の1つだ(筆者撮影)

これまで各国の鉄道会社は、夜行列車の不振はほかの交通機関の台頭に伴うものだと主張してきたが、この状況を目の当たりにして、不振の理由はリサーチ不足や、単に競争力のあるサービスや料金を提供できていなかったことにあったと気が付いた。

そもそも需要がなく採算が見込めないとして、いったん廃止を決めたにもかかわらず、各社が復活へ向けて具体的検討に入っているということは、運営の仕方次第では十分採算が見込める可能性がある、という判断があってのことだろう。

日本と欧州、異なる事情

では日本も、鉄道会社の怠慢が夜行列車利用客の減少を招き、廃止へと至ったのだろうか。

フランスとイタリアを結ぶ夜行列車「テッロ」。テッロはイタリア鉄道のフランス子会社で、フランス国鉄は運行に関わっていない(筆者撮影)

日本で夜行列車が衰退した理由はいくつかあるが、1つの理由として国鉄の分割民営化による弊害が考えられる。

インフラと運行会社を別会社とする、ヨーロッパの「上下分離方式」は、運行する会社が線路使用料をインフラ会社へ支払えば、あとは運行にかかるコストを差し引いた分は運行会社の利益となる。

だが、日本の地域分離の場合、運賃収入は通過する区間の距離に合わせて各社に分配される仕組みとなっており、一方で運行にかかるコストは車両や乗務員を用意する会社の負担となる。

例えば、かつての東京―九州間のブルートレインは、運行区間の両端となるJR東日本やJR九州が車両などを用意していたが、自社区間を走行する距離が短いため、運賃収入に対して負担が大きかった。きちんとした収入が得られなければ、サービスの維持・向上は難しくなる。それに加え、料金の安い夜間高速バスの台頭や車両設備の老朽化が、利用客数減少に拍車をかけた。

夜行列車に関しては、JR貨物のようにインフラを持たず、各社へ線路使用料を支払って運行する(第2種鉄道事業)独立した会社であったほうが維持できた可能性は高かっただろう。だが、運行にはダイヤ作成の面などで線路を保有する各社の協力が必要になる。

次ページ夜行列車の高速化が難しい日本の鉄道
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事