規模拡大より「やりたい気持ち」を重視する理由 内田和成×遠山正道「好きになる組織」論
内田:会社全体で、やりたい気持ちを最大限に尊重する文化があるわけですね。ちなみに、採用もそういう基準で見られるのですか。
遠山:はい。少なくとも、スマイルズファンであるだけでは絶対に入れません。誰かに引っ張られるだけの貨車ではなく、自分の中にエンジンやハンドルがあって、スマイルズをうまく利用しながら、やっていこうという人がいいですね。
プロジェクト化時代の3タイプの人材
遠山:私が最近思っているのは、世の中がプロジェクト化していくこと。大きな企業も細分化していくと思うのですが、そのときに、人は3タイプに分かれます。タイプAは自分で仕掛ける人。タイプBは何かの技などがあって、お声がかかる人。タイプCはそのどちらでもない。もちろん、Cにならないほうがいいわけです。
世の中のサラリーマンは、どちらかというと、Bになるリスクがあります。そもそも会社の都合であらかじめ仕事がたくさん用意され、上司から命令されることも多い。
明日何時に起きるかさえ、会社の始業時間から逆算して決める。自分で意思決定したり仕掛けたりする機会は定年までなくて、自分に意志があることすら忘れてしまうのです。
内田:Bの仕事の延長線上にAはない。将来的に経営者になったり、自分で何かをやりたいなら、意図的にAのようにアイデアを膨らませる必要がある、ということでしょうか。
遠山:そうです。小さくても自分で仕掛けることはやってみたほうがいいですね。例えば、自分が将来は故郷で、オーベルジュ(宿泊施設をもったレストラン)をやりたい。そのときに名産品の黒豆茶を出そうと思っているなら、自分の勤めている会社でお客様が来たときに、黒豆茶を出してみればいい。すると、お客様が「これは普通のお茶と違うね」と反応して、そこで何かが始まります。
会社のルールには、黒豆茶を出してはいけないとは書かれていません。そういうハンコのいらない、つまり退屈に思われている仕事ほど、自分で意思決定する余地があってチャンスになる。仕事を面白くするのはこうして仕掛けることです。
そういう小さなプロジェクトを仕掛けられる人は、周りからも「面白い奴だ」と見られるようになり、周りも「あいつに任せると、何かやるぞ」と思ってくれます。Aの試みをすることで、少なくともBになれるし、Aになる機会も増えるはずです。