JR東の新たな一手、英国で「日本流」は根づくか 駅ナカ自販機を設置、鉄道運行面では課題も

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日本の鉄道の強みである定時運行を現地で実践しようとしても、ルールの壁が障害になった。ダイヤ乱れ時には、直通列車を途中駅で折り返し運転する「分離運転」も影響の波及防止に有効だが、英国では、終着駅まで運転しないと運輸省との公約に反したという扱いになってしまうのだという。

ウェストミッドランズトレインズ社が運行するロンドン・ノースウェスタンの車両(写真:JR東日本)

混雑問題は日本も英国も頭の痛い問題だ。車両に乗り込んだ乗客がドア付近に固まり、なかなか奥に進んでくれないことが混雑の理由の1つ。日本では乗客に「車内の奥のほうにお進みください」と何度もしつこくアナウンスしているが、英国では「同じアナウンスを繰り返してもうまくいかない」と考える人もいるという。

「日本式」が成功するとは限らない

文化・習慣の違い。そしてルールの違い。これだけ違うと、日本で成功したノウハウが現地で成功するとは限らないのも納得がいく。そこで、最近は現地の運行担当者に日本に飛んでもらい、JR東日本の運行現場を見て、自らの運行業務に取り入れてもらえるノウハウがあるかどうかを彼ら自身に気付いてもらうという試みも始めた。頭ごなしに押し付けるよりも、自ら気付くほうが納得感を持って実践してくれると考えるからだ。

異文化の中でビジネスを行うのは確かに難しい。しかし、これは自動車や電機など、数多くの産業が経験してきたことだ。海外でもまれた経験は、日本でのモノづくりにも生かされた。鉄道業界はいささか遅きに失したが、異国における安全対策の考え方を知ることは、日本における安全対策の在り方を改めて考えるきっかけにもなるだろう。

その意味では、ウェストミッドランズトレインズへの出資は金銭に代えられない投資効果をもたらすことは間違いない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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