吉本を出たIT社長、目指すは「日本のジョブズ」 大家族10人を背に元芸人が挫折を乗り越える
スマートフォンアプリを使い、自宅のエアコンや照明を操作したり、テレビ番組を録画できる――。数年前から広がり始めたスマートホームは、アマゾンやグーグルが発売するスマートスピーカーの登場で、浸透しつつある。家の中で使われるIoT(モノのインターネット化)機器やサービスは、雨後のタケノコのように増えており、参入企業は住宅や家電、ネットベンチャーなど多岐にわたっている。
この激戦のハウステック分野において、異彩を放つスタートアップのベンチャーが、SOUSEI Technologyだ。社長の乃村一政(43)が2010年に注文住宅のSOUSEIを創業。SOUSEIは今や奈良県ではトップクラスの住宅ビルダーであり、年商も13億円強まで拡大したこの業界における異端児である。SOUSEI Technologyは2018年に、SOUSEIのIT部門を分社化して設立された。
スマートホーム専用のIoTデバイスの開発に着手し、2018年に住宅用OS(基本ソフト)となる「v-ex」をリリース。開発のきっかけは、グーグルが32億ドル(約4000億円)をかけて買収した、スマートサーモスタットの開発などを手がけるベンチャー、ネスト社との出会いだった。
住宅用OSを中小ビルダーに売りまくる
この出会いについては後述するが、v-exのコンセプトはいわば“住宅の頭脳”。住宅の壁にv-exが搭載されたセットトップボックスを取り付けると、スマートスピーカーやスマホアプリを通して、エアコンや照明、テレビなどを操作できる。さらに建材もIoTで管理することによって、老朽化やリフォームのタイミングを予測できる。ここまでならとくに目新しさはないが、「v-ex対応アプリを増やし、住宅版iPhoneのようにしたい」というのが乃村の描く構想だ。
v-exは建築資材として、ユーザー(住民)が基本的に無料で利用できる。現在は大手建材メーカー10社以上と連携するほかに、住宅設備や家電など複数メーカーと交渉中。中期的にはユーザー向けに健康管理などの有料アプリを増やす方針であり、プラットフォーム手数料で稼ぐビジネスモデルを描いている。
「家を買う際、平均3~5カ所の展示場に行くが、そのうち2カ所でv-exが目に入るようにしたい」と乃村は息まく。大手ハウスメーカーと比べて差別化の難しい中小ビルダーに的を絞って営業しているが、日本の新築住宅の販売シェア7割を占めるのは中小ビルダーである。年内には500カ所の住宅展示場やモデルハウスにv-exが搭載される予定で、これを1000カ所まで拡大することが目標だ。
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