トヨタが超高級「スーパーカー」を投入する意味 「レーシングカンパニー」が目指すものとは
「それは『人を育てる』ためです。今ピットではたくさん、トヨタの人間がいますが、そうじゃなければああいうことはやらないで全部プロに任せた方がいい。レースのプロの方が安くて確実でしょ。でも、あえてそういう人間を入れて、技術を吸収させているんです」(友山氏)
TMG(トヨタ・モータースポーツGmbH)を主体とするTOYOTA GAZOO Racingのチームに合流しているのは、トヨタ自動車のスタッフだけではない。デンソーやアイシンといったサプライヤーの若いメンバーも、やはりチームに入って作業をしている。
「クルマはウチだけじゃつくれません。サプライヤーさんも一緒にやっていかなきゃいけない。そこで得られたいろいろなノウハウは必ず生かされていくでしょうし、鍛えられたエンジニアはどこでも十分活躍していけるでしょう。そういうエンジニアの育て方とかクルマづくりは、今までしていなかったんです。いや、過去にはやってたと思うんですけどね。成瀬さん(元トヨタ マスタードライバーの故・成瀬弘氏)がいた第7技術部(トヨタ自動車工業時代に有志で日本グランプリに出場するなどモータースポーツ活動を行った)とかね。でも、ここまで来る途中で全部なくなっちゃった」(同)
モータースポーツが収益に貢献しないといけない
WECからはGRスーパースポーツが具現化してきたし、市販車としてはスープラがすでにデビューしている。ほかにもGRとしては引き続き、モータースポーツ由来のプロダクトを投入していく予定となっている。
「持続的にモータースポーツをやるうえでは、モータースポーツが収益に貢献しないといけない。娯楽だけじゃなくてね。やはりWECで勝つことがGRスーパースポーツの技術的価値もマーケティング的な価値も高めていく。WRCで勝つことが、次のヤリスの価値も同様に高めていくんです。そうするとそれらが売れて、収益が上がって、またそれをモータースポーツに投入して、また技術的価値とマーケティング価値を上げていく。これこそウチが回したい“サイクル”なんです。TOYOTA GAZOO Racingというかたちができて3年。カンパニーができて2年です。石の上にも3年。これから結果が少しずつ出てくると思います。結果というのは具体的な商品であり、具体的な成果が出るということです」(同)
その成果には人が育つという意味も含まれるだろう。友山氏はカンパニー内で「あなたたちはほかのカンパニーから好かれる存在になったらおしまいだよ」と言っているという。
「はい、『つねに摩擦を生んでいかないとダメだよ』って(笑)。お客様のニーズや期待は無限に高まっていくもので、それを追いかけて、追いつくことはない。つねにギャップがある。レースをやっていれば、ほかのコンテンダーも勝とうとして技術を高めてくるから、じっとしていたら負ける。ウチもやらなきゃいけない。こうやって自動的にモータースポーツファンとかライバルというのはどんどん高いところにいくんで、それをリードしたりフォローしたりしていくと、トヨタという会社がやっていることとはギャップができるんですよ、必ず。そうすると『お前たちそんな勝手なことやるんじゃない』って摩擦が生まれると思うんですが、それは気持ちがいいことでしょう?(笑)」(同)
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