トヨタが超高級「スーパーカー」を投入する意味 「レーシングカンパニー」が目指すものとは

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GAZOO Racing Companyの目的をまっとうしようとすれば、おのずと、より高みを目指した進化を求められることになる。技術もどんどん向上していく。むしろ、摩擦が生まれるくらいのカンパニーでいられるならば安泰だと、つまりはそういう話である。

「GRのモデルの中には、他のカンパニーが開発した車両をベースにGAZOO Racing Companyで仕上げたものがあって、特に限定車としてGRMNを設定しています。これも、やっぱりわれわれ側と既存の開発部隊ではギャップが生まれるわけです。こっちはどんどん進化しているし、向こうは守る物が多くて……いい悪いじゃなくてね。そうするとぶつかって、一旦中止するというようなことも起きる。そういうのが僕はすごくね、心地よい。だって簡単にうまくいったらおかしいじゃないですか。どんどん中止になったり遅れたりすればいいんですよ…なんて言っちゃいけないかな(笑)」(友山氏)

「自動車メーカーのほうが逃げていた」

話を具体的な商品、成果というところに戻す。もちろん人が育つのは重要だが、そのためにもGAZOO Racingにとっては、モータースポーツで結果を出すだけでなく、そうして結果を出したことが世で知られ、価値あることだと認められることも重要になるだろう。友山氏の言うサイクルを回すためには、そうした認知獲得の活動、あるいは文化としてのモータースポーツの流布といったことも求められるのではないだろうか。

GAZOO Racing Companyの友山茂樹プレジデント(撮影:尾形文繁)

「たとえばSuperGTって実は観客がどんどん増えてるんですよね。われわれが秋に開催しているTGRF(トヨタ・ガズー・レーシング・フェスティバル)も入場者はどんどん増えている。新城ラリーもそうです。こういう事象を見ると、今までクルマ好きがいなくなってきたと言っていましたが、本当は自動車メーカーのほうがクルマ好きじゃなくなって、逃げていたんじゃないかと思うんです。自動車メーカーがもっともっと、日本のモータースポーツを興行としてではなく、自分の事業の重要な課題というかテーマとしてやっていけば、また日本の中の新しいモータリゼーションみたいなものが生まれるんじゃないかと思います」(同)

冒頭で紹介したル・マン参戦車両であるハイパーカーから生み出される市販車、GRスーパースポーツコンセプトも、まさにそれを後押しする存在となる。販売価格数億円と言われるクルマを販売することの意味である。

「あのクラスのクルマを買える人は限られていると思いますけど、そういうものがフラッグシップになる。そして、その下にいくつかスポーツ専用車がでてきて、それがたとえばGT4カテゴリーだったり全日本ラリーとかに即参加できるものとなって、さらに86でやっている草の根のレースみたいなものをできるクルマがいくつか出てくると、非常に裾野が広がるし夢がありますよね、いろいろな人にとって。一生懸命働いて、この辺の(GRスーパースポーツコンセプトのような)クルマを買おうという人が出てきてくれるだろうし、それが日本車だったら嬉しいじゃないですか。しかもそれと同じクルマが富士スピードウェイで開催されるWECで、自分の眼の前を走っていたら、すごく興奮するでしょう? GAZOO Racingは、そういうところまでいかなければならないと思っているんです」(同)

島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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