年収2100万円!「キーエンス社員」は激務なのか 現役社員やOBが明かした「働き方の実態」

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キーエンスは各社員の担当や業務が細分化されており、それぞれの業務に関係しない社内情報を知る機会は少ない。そのため「社内でも労務管理が具体的にどのように行われているのかわからなくて、噂が一人歩きしているのだろう」(キーエンスの営業所幹部)との声もある。木村氏も「GPSは使用していないことを社内でも周知させたい」と答えた。

3年後離職率は2.4%と低い水準

ただ、あるOBは「ETCの通過時間の記録は労務管理で利用されていた」と指摘する。ETCは経費の精算にもかかわるため、内部監査でもチェックされて予定ルートと異なる場合や走行時間に異変があれば指摘が入ったという。またキーエンス製品を利用する工場の関係者は「キーエンスから弊社を担当している営業社員がちゃんと営業に来ていたかの確認の電話を受けたことがある」と明かす。

そもそもブラック企業の根拠の1つともなっている平均年齢35.8歳、平均勤続年数の12.1年は本当に短いと言えるのか。木村氏は「近年、新卒採用の規模を拡大しており、若手社員が増えていることが平均勤続年数の短さの原因だ」と話す。

有価証券報告書に記載される子会社を除いた2019年3月時点のキーエンス単体の従業員数は2388人。同社には2019年に新卒社員として約250人が入社しているため、約1割が新人という計算となる。また、『就職四季報2019年版』(小社刊)によれば、同社の3年後離職率は2.4%と低い水準だ。

2010年代前半に退社したOBは「退社した時期にようやく定年退職を迎える人が増え始めた」と語るなど、設立からまだ40年強しか立っていない比較的若い会社であることも勤続年数が短いことに影響しているとみる。

キーエンスの前身であるリード電機が設立されたのは1974年。1973年に設立された日本電産は、平均年齢39歳で平均勤続年数も9.4年となっている。国税庁が公表している「平成29年分 民間給与実態統計調査」によれば、民間の平均勤続年数は12.1年。キーエンスは平均程度で決して短くない。

起業者数が多いということについても、「300人くらいが集まったOB会に出席したときに、起業した人は指で数える程度しかいなかった」(50代OB)。業務の合理性を追求する社員が育つため、転職市場でキーエンス社員は人気の的ではある。そのため、転職する人が少なくないのはたしかだが、「他社と比べて極端に多いとは思わない」(30代OB)との見方もある。

平均年収の高さや断片的な情報からブラック企業というイメージが先行し、実態が誤解されているところも多い。業務の合理化が徹底されたキーエンスは、「高年収=激務」という印象が必ずしも一致しない企業の1つと言える。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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