日産、株主総会後も「ルノー支配」は変わらない ゴーン氏を失ったことは大きな痛手だった

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――株主総会での承認を経て、日産は指名委員会等設置会社に移行します。一時期、ルノーはその議案に棄権する意向を示していました。

服部暢達(はっとり・のぶみち)/1981年、東京大学工学部卒業後、日産自動車入社。マサチューセッツ工科大学でMBA取得後、ゴールドマン・サックス証券に入社。1998年から2003年までマネージング・ディレクターとして日本におけるM&A業務を統括し、多くの案件に関わる(撮影:今井康一)

私がルノーのアドバイザーだったら、指名委員会等設置会社への移行には反対させただろう。指名委員会等設置会社になると、会社法で各委員会委員の過半数を社外取締役とすることを義務づけられている。とくに取締役候補を決める指名委員会が社外取締役主導になると、ルノーの影響力が大きくそがれる。両社が結ぶ「改訂アライアンス基本合意書(RAMA)」という契約によると、ルノーは日産が提案する取締役候補の議案に株主総会で賛成しないといけない。

――指名委員会の委員に就くルノーのジャンドミニク・スナール会長だけでなく、監査委員会の委員にティエリー・ボロレCEOを入れる譲歩案を日産が示し、ルノーは棄権を撤回しました。日産は手痛い譲歩を迫られたのでしょうか。

委員会に2人を入れることだけでルノーから棄権の撤回を引き出したことは、日産にとって「小さな勝利」だ。指名委員会にルノー側から1人が入ったところで、社外取締役がきちんと機能すれば、日産の取締役人事をルノーがコントロールすることはできない。監査委員に1人を送り込んでも、大きな影響はない。

ゴーン前会長の不正事件があって、コーポレートガバナンス(企業統治)を改善するという(指名委員会等設置会社へ移行する)大義名分に対しては、ルノーも強硬に反対することは難しかったのだろう。

「ルノー支配」の現実は変わらない

――株主総会を無事に終えることができれば、日産の独立性は担保されるのでしょうか。

そんなことはない。ルノーが日産の43%超の議決権を持っているという現実は変わらない。今回の騒動でわかったように、ルノーが棄権するだけで経営の重要事項を決める特別決議(議決権を持つ株主の過半数が出席し、その3分の2の賛成を得る必要がある)が通らない。議決権の行使比率を考えると、ルノーが反対すれば普通決議も通らない可能性が高い。

――そもそも、日産がルノーの支配力を引き下げようとすることは妥当なのでしょうか。

ルノーと日産を比べると技術力では明らかに日産が上だ。ルノーの技術力は、大手自動車メーカーの中でも低いほうだ。にもかかわらず、日産の技術開発にまでルノーが口だしすることが増えていると聞く。

そもそもルノー自体の業績も芳しくなく、ゴーン前会長以外はめぼしい人材もいない。そんなルノーの支配下にいることは、ルノー以外の日産株主にとってデメリットが大きい。

ただ、プラットホーム(車台)の共通化などさまざまな分野で協業が深まっており、今さら提携を解消する選択肢はないと思う。だから、(日産としては)ゴーン事件の熱が冷めないうちに、できれば1年以内に両社の資本関係を対等に持っていきたいところだろう。

具体的には、ルノーの日産への出資比率を、少なくとも特別決議への拒否権がない3分の1以下に低下させ、日産のルノーへの出資は20%以上に引き上げる。目指すべきは「是々非々の提携関係」だろう。

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