今期減額の資生堂に2つの「誤算」、来期は新ブランドや刷新効果で上向くか
国内化粧品最大手、資生堂の今2009年3月期は売上高が従来計画から200億円少ない7000億円(前期比3.2%減)、営業利益が同80億円少ない570億円(同10.2%減)と、増益計画から一転、営業減益となる。会社側が08年4~12月期実績を踏まえて下方修正した。「東洋経済オンライン」も会社予想を踏襲する。
予想外の大失速だ。同社が1月末に発表した08年4~12月期は売上高が5185億円と前年同期比3.4%減、営業利益は373億円と同25.7%沈んだ。特に10~12月期だけに限ってみると、売上高が前年同期比8.5%縮小、営業益は同81.5%減といかに同四半期が厳しかったかよくわかる。09年1~3月も引き続き厳しい状況が続くため、今期は国内、海外とも収益は想定以下で着地する公算だ。
最大の誤算は国内化粧品の不振だ。10~12月期国内化粧品の売り上げは前年同期比10.3%減少と店頭販売化粧品市場の縮小幅(3%、資生堂調べ)を大きく上回る。なかでも、得意とするカウンセリング販売は同12.1%減と大苦戦。消費低迷の影響からすでに苦戦の様相を呈していたが、10月以降さらに主力の中価格帯(2000~5000円程度)の消費者離れが進み、新規投入ブランド以外は価格帯にかかわらず総じて計画未達となったもようだ。
今回、国内化粧品が予想外に大苦戦した要素は大きく2つある。ひとつは、既存ブランドに斬新さが欠けた点。同社は近年、総ブランド数を絞る旁ら、大型ブランドに集中投資・育成する戦略を進めている。今期は対面型販売用大型ブランドとして「リバイタル・グラナス」を投入した。その一方で、他社が新ブランド投入やリニューアルをするなかで、「マキアージュ」など数年前に立ち上げていたブランドはすでに新味が薄くなっている。これが消費減退と相まって予想以上の“資生堂離れ”につながってしまったようだ。
もうひとつは、低価格帯製品の力不足。もとより、1000円前後の低価格帯は同社の注力価格帯ではないとはいえ、対面型販売向けブランドに力を入を入れる一方で、低価格帯製品の強化が足りなかった。消費者が「より安く」を求めて、数千円の化粧品から低価格製品へ流れるなかで、こうしたニーズに合致した製品を訴求できず、一部の需要を取りこぼした可能性は大いにある。
来10年3月期も視界不良。市場環境の好転が見込めないなかで、どれだけ奪われたシェアを取り戻せるかが勝負になってくるが、同社は国内では昨年「リバイタル」のほかに60代向けスキンケア製品を投入した。この1月には「マキアージュ」をリニューアルしており、こうした製品群でどれだけ巻き返せるかに注目だ。海外は円高が懸念材料だが、中国での需要は依然堅調で横ばい以上は維持できそう。
「東洋経済オンライン」は、国内の売り上げの回復は見込みにくいものの、主力の高・中価格帯が回復して、若干の販促費抑制ができれば減収でも今期比横ばい以上は見込めると考えて以下のように予想する。なお、今期はセレクトショップの「ザ・ギンザ」閉鎖など構造改革費43億円を特損として計上するが、来期予想ではこうした損失を想定していない。
(倉沢 美左)
《東洋経済・最新業績予想》
(百万円) 売 上 営業利益 経常利益 当期利益
連本2008.03 723,484 63,465 65,088 35,459
連本2009.03予 700,000 57,000 58,000 30,000
連本2010.03予 690,000 57,500 58,500 35,000
連中2008.09 359,388 33,878 36,322 20,088
連中2009.09予 340,000 23,000 24,000 13,000
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1株益¥ 1株配¥
連本2008.03 86.1 34
連本2009.03予 74.2 50
連本2010.03予 86.5 50
連中2008.09 49.7 25
連中2009.09予 32.1 25
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