「非常識」な着物ショーが大盛況になったワケ コアなファンより「洋服を着た」ファンを狙え
新元号に沸いた今年5月、東京・日本橋である着物イベントが開催された。その名も、「東京キモノショー」。10連休も手伝ってか、初日は入場制限が出るほどの盛り上がりに。最終的な来場者数は昨年より1600人多い1万2000人に上った。
今年4年目を迎えるこのイベント、従来の販売型展示会とは一線を画し、着物コーディネートの展示や、販売を目的とするマルシェと言われる20店舗ほどのブースのほかに、和楽器による演奏やダンス、創作お茶会、時代衣装の着付け、ワークショップなども開催。期間中つねに何かしらのパフォーマンスを体験できる仕掛けになっており、今まで少しは興味があっても着るまでには至らなかった、という人でも着物の世界を体感できるイベントとなった。
このままでは時代から取り残される
着物が日常ではなくなって久しい。経済産業省が主催する和装振興協議会によれば、和装全体の市場規模は1981年の1兆8000億円をピークに、近年は3000億円前後まで減少。業界全体の売り上げも、一時の急激な右肩下がりではないもののここ何年かは横ばいが続く。
さらに従来の「高い・難しい・着ていくところがない」という3大マイナスイメージに加えて、気軽に利用できるレンタル着物や、ネットでの着物売買による価格破壊、また最近ではメルカリのような消費者同士が直接取引するサービスが台頭しており、少なからず売り上げに負の影響を与える存在となっている。
今回、東京キモノショーを主催し、自身も着物作家として活動する中野光太郎さんも「つねに危機感はありますね。自分が時代から取り残されていくような」と話す。
「リサイクル、ネット販売、デジタル染色、観光レンタル、フォトスタジオなど元気のいい業界と、伝統工芸とはまったく対極になってしまっているので、伝統的に着物を扱っている業者さんはますます厳しくなる。そういった声のほうが圧倒的に多いのが残念ですけどね。世の中は変わっていくんだなぁって思います」
しかし、こうした現状を誰もが黙って手をこまぬいて見ているわけではない。危機感を抱いた業界に携わる人たちが、着物という伝統文化の将来に可能性を見いだそうと、次なる道を必死に模索し始めている。もともとイベントに関わる仕事をしていた中野さんもその1人だ。
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