製造業派遣は是か非か--労使キーマンが激論バトル《特集・雇用壊滅》

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■企業側の主張

「派遣そのものが悪ではない雇用創出のプラス面もある」
 --鈴木正一郎・日本経団連・雇用委員会委員長

資本主義経済では景気変動は避けられない。不況になったときに雇用問題をどうするか。企業、労働者、そして政府の三者が知恵を絞って、その影響を最小化する必要がある。

現在、不況のシワ寄せを最も受けているのが非正規労働者、中でも派遣労働者であることは確かだ。だからといって、派遣労働そのものが悪だというのは一方的すぎる。派遣だから安易に切る、ということはない。企業もギリギリの選択をしている。

日本は戦後長らく完全雇用でやってきた。だが、今や潜在的な経済成長率は低下し、正規雇用を抱えるだけでは経営が立ち行かなくなった。そうした中で、派遣という多様な働き方が、雇用を創出してきたプラス面もある。

現在、集中的に人員削減が起こっている製造業派遣にしても、それが解禁されて何が社会的に起こったのか、成果と問題点を冷静に分析する必要がある。そのためには雇用している企業の考え方、働いている人の実情をきちんと調べなければならない。1999年の自由化以前に戻れという声もあるが、同じことだ。拙速に議論すべきではない。

本来、需給調整のプロとして、ある会社がダメなら次の会社へと、派遣先を見つけるのが派遣元の仕事だ。それが100年に一度ともいわれる不況で、今回の景気悪化はスピードが速く、しかも谷が深い。好調な業種がほとんどないため、次の派遣先を見つけられないことが問題を大きくしている。

企業は法律や契約を守って経営しなければならない。モラルは当然必要だ。だが、企業のモラルだけに頼ってセーフティネットを作ろうというのは無理がある。経営状況によっては、法律や契約にのっとって派遣契約を中途解約する場合もある。それまでダメだというのでは、経営は成り立たない。派遣労働者の失業率が高まるのは、制度上、ある意味で致し方のない面がある。

したがって、政府にはセーフティネットの構築をぜひお願いしたい。こうした経済情勢においても労働力が不足している部門がある。そこに再就職できるように職業訓練を行うことが必要だ。あるいは、環境関連など、新たな雇用創出政策を早急に打ち出してほしい。

ワークシェアリングについては、いまやるのであれば緊急雇用対策型だろう。雇用を確保して失業者を極力なくすため、1人当たりの労働時間を減らそうという考え方だ。その分、賃金は低下することになる。だが、雇用や仕事のあり方は各社各様。個々の企業の労使がどのような選択をするかに任せるしかない。

すずき・しょういちろう 写真左
1961年東京工業大学卒業後、王子製紙入社。2001年社長、06年会長。経団連評議員会副議長。

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