西武が乗り出す「とんがり」新事業は成功するか 鉄道、ホテル、不動産に次ぐ第4の柱になる?
いくつか話を聞く中で筆者が面白いと感じたのは、ヘリコプター関連の取り組みだ。これまで西武グループは航空事業に関しては、ほぼノータッチだったが、「今後、技術革新が進めばドローンに人が乗る時代が到来する。SWINGに先行して実施した2017年のアクセラレータープログラムでは、ヘリコプター関連ベンチャーの事業を採択した。都内やリゾート地のプリンスホテルの事業所を中心に所有するヘリポートをつなぐような、空の次世代交通網の整備を見据え、ノウハウを蓄積する」(田中氏)。
では、西武グループにとって、最も重要であろう鉄道の沿線価値や利便性向上といった部分に関しては、西武ラボはどのような取り組みを行っていくのか。
「鉄道の利用に関して、今後大きなインパクトがありそうなのが、働き方改革に伴いテレワークなどの新たな働き方が認められる事象が増えていることだ。こうしたトレンドに対して、われわれはより快適な通勤環境をご提供すべく、朝の通勤時間帯に下り電車で通勤できるようなエリアに、コワーキングスペースを整備できないか、西武鉄道と共同で検討している」(田中氏)
MaaS対応も必要では?
こうした環境の整備は利用者にとってはありがたい話ではあるが、一方で、あまりにも職住近接が進みすぎると、通勤定期の売り上げが減少するなどのジレンマに陥ることになるのが、悩ましいところだろう。
そして、最近の鉄道事業に関する課題が、首都圏のほかの電鉄会社の何社かがすでに進めている「MaaS(マース)」(ICTでさまざまな交通機関などをシームレスにつなぐ概念)での出遅れだ。
ライバルの東急電鉄は、「観光型MaaS」により、伊豆の観光の活性化まで視野に入れた取り組みを開始しており、小田急電鉄もMaaSの基盤開放に向けた取り組みを進めるなど、陣取り合戦がはじまっている。
現在、東急が伊豆で実証実験を行っているアプリでは、鉄道・バスのみならず、観光施設の予約・決済やオンデマンド乗り合いタクシーの配車なども行うことができる。もともと都市部での交通の利便性向上を前提としてきたMaaSではあるが、観光地においては新たな観光需要の創出にも貢献しそうだ。西武グループは首都圏近郊に限っても、伊豆箱根鉄道・バスを含む沿線に、伊豆、箱根、秩父、川越などの観光地を抱えており、MaaSで大きく出遅れれば、将来の鉄道やレジャー分野の業績を左右する可能性がある。
「MaaSは大きな経営課題になってきている」(西井知之 西武HD取締役経営企画本部長)と、西武もこの点は認めており、こうした領域にこそ西武ラボの強みを活かしていくべきではないか。
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