西武が乗り出す「とんがり」新事業は成功するか 鉄道、ホテル、不動産に次ぐ第4の柱になる?
西武ラボが手がける事業の中で、今まさに進行中であり、社内外から注目を集めているのが、事業創造プログラムの「SWING(スウィング)」だ。個人・法人、社内外を問わず、広く事業アイデアを募集し、西武グループが事業の実現までをサポートする同プログラムは、ベンチャー企業と大手企業をマッチングする既存の「アクセラレータープログラム」の枠を越えるものだという。
「一般的なアクセラレータープログラムは、ベンチャー企業がすでに持っている技術やサービスの売り込みで終わってしまいがちだ。どんなにいい技術やサービスをご提案いただいても、どこで使えばいいのかということになってしまう。SWINGは逆の発想で、西武グループの課題は何かというところからスタートし、課題解決のためのテーマをきちんと定義し、それに沿ったアイデアを公募した」(田中氏)
SWING第1回目となる今年は、「あたらしいしき」をテーマに、1月から2月にかけてアイデアを募集した。このテーマの「しき」には「四季」のほか、セレモニーの「式」の意味も含み、「四季もそうだが、さまざまな式の在り方も、一昔前と比べると大きく変化した。そうした変化をうまく捉えたアイデアが出てくることを期待した」(田中氏)と話す。
線路上に造った高架を自転車が走る?
このようなテーマを募集する背景には、生活環境の変化や、温暖化の影響で夏が暑くなりすぎるなどにより、積極的に外に出かけない人が増えていることに対する、交通事業者としての危機感がある。人々に楽しく、快適に外出してもらえるようなアイデアを募り、事業につなげていくのが今回の大きな狙いだ。
最終的に、社内から23件、外部から110件の合計133件の応募があり、そのうち10件を検討事案として選出した。
この10件には、不動産の建築が難しい大自然にトレーラーハウスを移動・設置する「モバイルホテル」といった比較的すぐに実現できそうなものから、西武池袋線、新宿線にもう一段高架をかけ、自転車などの専用ロードとして活用するという、実現難易度がかなり高いアイデアまで含まれている。
「新規事業を創出するうえでは、われわれが今まで考えたこともなかったようなアイデアが寄せられることが大事であり、選出時には法令や予算面からの実現可否については審査の基準にしなかった。高架をかけるというアイデアは、突飛なように思えるが、諸外国含めて調査すると、同じようなことを検討している事例がみられる」(田中氏)という。
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