スタバと大量閉店「黒船チェーン」の決定的な差 本国で成功したコンセプトを生かせてない

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縮小

バーガーキングが苦しんでいる理由はマクドナルドが低価格戦略で成功している市場で、消費者から見てそれほど大きな違いのないバーガーキングがプチプレミアムと呼ばれるやや高めの価格を維持しようとしていることに問題があるといわれています。この点について一段深く掘ると、もう少し複雑な事情が見えてくるのですが、まずは他のチェーンの事情も見てみましょう。

バーガーキングと比較するとサブウェイの大量閉店はより深刻です。つい先月も首都圏で20店舗を運営していた大手フランチャイズ運営企業が破産宣告を受けるなど、フランチャイズ側も儲からない。一方で日本法人も赤字が続き、投資をする体力が落ちてきています。ピークといわれた2010年代中盤から見ると200店舗規模での店舗閉鎖が起きています。

3社の乗り越えられていない課題とは?

かつてサブウェイは「その場で作る健康的なサンドイッチチェーン」として日本でも急速に店舗数を増やしました。ちなみにサブウェイは世界的には店舗数がマクドナルドを上回る世界最大のチェーン店で、世界で約4万4000店を展開しています。日本では1992年の上陸以降、「野菜のサブウェイ」のスローガンを打ち出し店舗数は急拡大。健康に気遣う女性を中心に業績を伸ばしました。

しかしその売り上げの大半がランチタイムに集中するという弱点があって、かつ、手作りである分オーダーから製品提供まで時間がかかるといった事情もあり、ほかにも健康を標榜する競合が台頭する中で、サブウェイからゆっくりと顧客離れが進んでいきました。価格帯としてはバーガーキング同様にプチプレミアム価格だったことで、ランチタイムの女性需要以外の新需要が開拓できなかったことがマイナスに働いたといわれています。

クリスピークリームドーナツはバーガーキングと同時期に同じロッテリアとリヴァンプが手を組んで日本に上陸しました。1個160円の軽くて甘いオリジナルグレーズドというドーナツが大人気となり、1号店となった新宿サザンテラス店には2時間待ちの長蛇の列ができ、大きな話題を呼びました。このオープン時の熱狂が後の反動減につながったといわれています。全国64店舗まで拡大したあたりをピークとして、店舗数も縮小を始めます。こうして2015年以降、全国で20店舗が閉店されていきます。

2016年にはあれだけ人気だった新宿の1号店も閉店が決まりました。クリスピークリームドーナツはこの一連の大量閉店を戦略転換だと言っています。行列のできる店から、長く愛される店へと転身を図る中で大型店を閉鎖する一方、小型で居心地のいいお店を増やしていく。新宿エリアでは新しい新宿のランドマークになった東宝のゴジラビルの直下にそのような新店舗が開店しています。

さて3つのチェーンの閉店の事情はこのようにそれぞれ違います。しかし事情は違ってもそれぞれにある共通点があるということが今回の記事のポイントです。

アメリカで大成功して、そのコンセプトで日本に上陸して、日本でも当初は歓迎される。しかしプチプレミアム価格帯であることが途中でマイナスに働くようになり、やがて需要が減少していく。起きてきた事象を見てみると、よく似たことが3つのチェーンとも起きています。そしてその後ろには、ある魔物が存在している。ここが3社の乗り越えられていない課題です。

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