スタバと大量閉店「黒船チェーン」の決定的な差 本国で成功したコンセプトを生かせてない

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アメリカから上陸した他の有力チェーンでは、この3社のような罠に陥らずに成功している飲食チェーンも存在しています。いちばん目立つのはスターバックスコーヒーでプチプレミアム戦略が功を奏して高収益チェーンの象徴といわれるほど展開がうまくいっています。では大量閉店の3社は何が違ったのでしょうか?

実は3社のチェーンはどれも、アメリカで成功したコンセプトが日本市場に文化として受け入れられていない。ここが共通の深層要因であり、乗り越えられていない魔物の正体です。

バーガーキングがなぜアメリカで成功したのか。その理由はマクドナルドとよく似たメニューをそろえながら、調理の際に網焼きにすることで余計な脂を落として調理したことです。ハンバーガーというジャンクフードを調理のプロセスで少しだけ健康によい食べ物に変えたという点が、そもそものバーガーキングの成功コンセプトです。

アメリカではこのことがCMで強調されていて、全米の父母が「ハンバーガーを食べに行きたい」という子どもを連れて行く店として、マクドナルドよりもバーガーキングを選択した。それがバーガーキングのそもそもの成長の原動力でした。

スターバックスがなぜ日本であれだけ成功したのか

ところが日本のバーガーキングは最初の上陸から20年以上が経つのに、この特徴を日本市場できちんと伝えていません。結果、子どもの顧客は少ないまま。そしてジャンクフードが好きな顧客はマクドナルドに流れ、健康的なハンバーガーが好きな顧客はフレッシュネスバーガーに流れるという形で顧客を奪われ、市場の中でなぜ存在しているのか消費者にもよくわからない。中途半端な存在になっているのです。

サブウェイはそもそもアメリカでは「サンドイッチを夕食としても食べる文化がある」という前提で成長した企業です。細長いパンを真ん中で半分に切ったサイズがランチ用、パン一本分のサイズがディナー用というのが本来望ましい食べ方です。しかしこのコンセプトが日本市場に根付いていない。日本ではあいかわらずサンドイッチは昼食で食べるメニューのままです。

結果売れるのはランチの女性向け需要だけ。その日本市場特有のニーズに20年間フォーカスしすぎて、文化を変えられていない。それ以外の時間帯の需要が創造できていない。しかも男性にとっては量がちょっと物足りない。男性を捨て、夕食を捨てればアメリカの4分の1の業績になるのは当然です。

厳しく言えば、サブウェイは日本の文化を変える投資を27年間怠ってきた結果、本来の強さが刺さらない市場で戦い続けるという苦しい状況を自らが招いてしまっているのです。

クリスピークリームドーナツはアメリカではとても甘くてふわっとしていて「いくつも食べたいドーナツ」を提供し、それを「1ダースを標準サイズとして家に持ち帰る」というコンセプトで伸びた会社です。当初は日本でもこのコンセプトは受けましたが、現在では甘さを抑えたドーナツを開発し、小さな店舗で少ない顧客を相手にビジネスを行っている。これが悪いとは言いませんが、アメリカでウケた成功コンセプトが日本市場向けに変質しているという点では課題は他の2社と共通しています。

スターバックスコーヒーがなぜ日本であれだけ成功したのか。それはアメリカで成功したコンセプトからぶれていないからです。

そもそもアメリカで成功したコンセプト自体もそれまでのアメリカ市場の文化を変えたところから始まっています。イタリアで栄えている、そしてアメリカにはなかったエスプレッソコーヒーの香りと味を愉しむコーヒーショップをシアトル発で展開したい。そうやってアメリカの文化を変えることで成功し、日本でもそれまでの日本の喫茶店文化を変えることでスターバックスは大成功を収めてきました。

アメリカであれだけ成功しているチェーンであるということは、そのコンセプトにはそれだけの強みが存在していることを意味しています。それはどのチェーンにとっても共通点です。しかしこれらの3社はそのコンセプトに投資して、日本の文化を変えていくことに力を入れてこなかった。そのようなチェーンが今、大量閉店を招いているように私には見えるのです。

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