都心へのアクセスが意外と便利な「和光」の魅力 有楽町線や副都心線の急行も停車の和光市駅

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駅近くの商店店主に話を聞くと、この町は居住者の出入りが案外激しく、転勤などでの転入転出も多いそうだ。駅前にはワンルームマンションや賃貸物件が目立つのもそのせいだろう。最近は相続などで地主が駅前の土地を手放して宅地化がどんどん進んでいるという。

東京都練馬区の大泉学園町に住む人の自宅は、西武池袋線大泉学園駅まで和光市駅とほぼ等距離で徒歩約40分の位置にある。通勤には始発列車がある和光市駅のほうが便利だそう。ただ、自宅からは大泉学園駅行きのバスがあるが、和光市駅に行くバス路線がないため、大泉学園駅から通勤しているとか。

牛が放牧されていた

板橋区に住む人は、1970年代、和光市との県境に近い板橋区立の小学校に学び、教室の窓から和光市側を眺めると当時は牛が放牧されている風景が見えたという。

JAの野菜直売所では、市内産の野菜がお買い得価格で販売されている(筆者撮影)

たまに学校の友だちと県境を越えて和光市を探検に行くと、板橋区では舗装されていた道がいきなり砂利道になっていたり、ガードレールが壊れたまま放置されていたりして辺境感におののいたそうだ。それもはるか40年以上前。今は板橋も和光も、その境はわかりにくくなっている。

ただ、都内から東武東上線で和光市に向かうと、成増あたりまでは線路周辺に小さな建物が建て込みごちゃごちゃしているが、埼玉県である和光市付近に至るといきなり田園風景となる。

その人が近年驚いたのは、地下鉄副都心線が開通した際に、急行列車が和光市駅には停車するが、隣の地下鉄成増駅には停車しなかったことだった。

和光市駅ホームには「東京23区生活」を謳うマンションのポスターが貼られていた(筆者撮影)

東武東上線の急行と快速は和光市、成増の両駅に停車するのだが、地下鉄副都心線の急行は和光市駅から地下鉄成増駅を飛ばして2駅目が池袋、3駅目が新宿三丁目、5駅目が渋谷という具合に都心へのダイレクトなアクセスを実現。飛ばされた地下鉄成増駅利用者にはショックを受けた人もいたようだ。

この5月、和光市駅を何度目かの取材で訪ねると、駅のホームには「暮らしを彩る、東京23区『成増生活』」という分譲マンションのポスターが何枚も貼ってあった。

このポスターを見て思うのは、東京23区内の住所を選ぶか、自然豊かで利便性も高い埼玉県和光市を選ぶかという選択があること。東京都板橋区成増(地下鉄成増)駅と埼玉県和光市駅の所要時間は約3分。どちら側に住むのか。それはその人の価値観次第なのだろう。

鈴木 伸子 文筆家

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すずき のぶこ / Nobuko Suzuki

1964年生まれ。東京女子大学卒業後、都市出版『東京人』編集室に勤務。1997年より副編集長。2010年退社。現在は都市、建築、鉄道、町歩き、食べ歩きをテーマに執筆・編集活動を行う。著書に『中央線をゆく、大人の町歩き: 鉄道、地形、歴史、食』『地下鉄で「昭和」の街をゆく 大人の東京散歩』(ともに河出書房新社)『シブいビル 高度成長期生まれ・東京のビルガイド』(リトル・モア)などがある。

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