鉄道の「自動運転」、海外で事故は起きているか

「人より正確」、ロンドンやパリは大事故なし

14号線は開業以来大きなトラブルもなく順調に運行されたため、交通局は既存の1号線の自動化へ踏み切った。

運転士は乗務するが、自動運転を取り入れたパリのRER-A線。ヨーロッパでは、人件費削減や正確な運転を目的として列車運行を自動化する事業者が増えている(筆者撮影)

同線は1900年、パリで最初に開業した地下鉄路線で、当然ながら従来は運転士による手動運転を行っていたが、2012年に完全自動運転を開始。自動運転化を前に、全駅にホームドアの設置が行われた。これまでに停電などで停止したことは何度かあったが、負傷者を伴うような大きな事故は発生していない。

パリではこのほか、一般鉄道のRER-A線で運転士が乗務する形の自動運転が行われている。交通局は自動運転化による人員削減を目指しており、今後も他路線に採用していくとしている。

ドイツはセンサー技術を駆使

ドイツ南部のニュルンベルク市で運行されている地下鉄は、完全自動運転にもかかわらずホームドアがない。この地下鉄車両には高度なセンサー技術が採用されており、車体前方のカメラで線路状況を確認し、障害物が感知されれば緊急停止する。近年、自動車に採用されている運転支援システムと似たようなシステムだ。

ニュルンベルクのU2号線。完全自動運転だが、ホームには柵もホームドアもない。高度なセンサー技術の採用により、障害物があれば緊急停止させる安全装置を備える(筆者撮影)

このようなシステムだと、線路に捨てられた紙袋や、地上区間で車両の前を横切る鳥などに反応しないかという心配もあるが、このセンサーは障害物の認識機能を備えていて、鳥などが横切った程度では緊急停止しないようになっている。

また、車両側のセンサーに加え、プラットホームにかかる線路部分にもセンサーが張り巡らされ、地上側、車両側の双方から線路の状態を確認するシステムとなっている。

運輸指令室では3人態勢で各列車の状況を確認しており、トラブルが発生するとモニターに注意メッセージが表示され、どの区間を走るどの列車に問題があったか、すぐに確認できる。

前出の欧州2大都市とは人口規模が異なるので、このセンサーによる障害物検知システムが万能かどうかについては少々疑問が残るが、もしかしたらこうしたセンサー技術に今後の安全対策のヒントが隠されているかもしれない。

繰り返しになるが、今回のシーサイドラインの事故は、これまでに前例のない事故として、その原因は徹底的に究明し、事故の再発は絶対に防がなければならない。ただ、この事故だけを取り上げて、いたずらに完全自動運転を危険だと決めつけることは自重して欲しいと切に願う。

JR山手線で試験が行われている自動運転についても、開発を停滞させるどころか、むしろこうした事例をも考慮に入れて、さらに安全で正確なシステムが構築されることを願ってやまない。

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