鉄道の「自動運転」、海外で事故は起きているか 「人より正確」、ロンドンやパリは大事故なし
世界で初めて自動運転を実現したのは、1968年に開業したロンドン地下鉄ヴィクトリア線だ。運転士は乗務するものの、ドアの開閉と発車ボタンを押すだけで、あとは万が一の際に非常停止スイッチを押すことと避難時の誘導が主な業務となる。
その後、同じくロンドンに1987年に開業したドックランド・ライトレール(DLR)はヴィクトリア線のシステムをさらに一歩進め、発進停止を含めた完全自動化を達成したが、やはり乗務員が添乗している。この乗務員の仕事は、車内での検札や前方の目視などであるが、最前部に乗務員専用の運転席はなく、客席と共用の添乗スペースがあるのみだ。
人員削減でなく正確さが狙い
なぜロンドンでは運転士なしの完全自動運転を行わないのか。その理由の一つは、特段の防護装置がないにもかかわらず、駅にホームドアが設置されていないという点が挙げられる。
ヴィクトリア線のプラットホームには柵もホームドアもなく、人が線路へ転落する可能性がある。運転士がドアを閉じた後、発車ボタンを押すだけで、列車は次の駅の停止位置まで正確に走行するが、緊急時の停止ボタンは運転士が押すことになる。
DLRは基本的な運転操作をすべて運輸司令室から遠隔で行っているが、こちらも特に転落防止センサーなどは設置されておらず、非常時の最終的な判断は乗務員もしくは運輸指令員に任せるというシステムである。これらの自動運転技術は、人員削減というよりは、より正確な運転を目的としたシステムと言えよう。
DLRは1991年4月、ウェスト・インディア・キー駅で2つの列車が衝突脱線、多数の負傷者を出す事故を起こしているが、2本の列車のうち一方は乗務員が手動運転を行っていて、こちらが自動運転の列車に衝突したことが原因であった。つまり、自動運転を起因とする事故は1987年の開業以来、皆無ということになる。
一方、パリで運行されている地下鉄のシステムは、日本の新交通システムに近いものだ。ゴムタイヤを履いた車両が走るパリ地下鉄の1号線と14号線は、いずれも乗務員が添乗しない、完全自動運転の路線だ。
14号線は、1998年に開業したパリで最も新しい路線で、同市の地下鉄で初めて運転士の乗務しない完全自動運転を実現した。
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