オバマは100日で不良債権買い取り銀行を成立させられるか--景気や株価・ドルへの影響は…!?
2000年前後の日本に戻る。当時、「整理回収機構(RCC)」では不良債権処理が進まず(前述)、ここで登場したのが「産業再生機構(IRCJ)」。「産業再生機構(IRCJ)」は日本の財務省所管「預金保険機構(DIC)」の100%出資により(2003年5月20日から農林中央金庫も出資)、2003年4月16日に設立された株式会社(Industrial Revitalization Corporation of Japan/IRCJ、2007年3月15日解散)だ。
産業再生機構(IRCJ)」は、銀行の不良債権のうち、再建できそうな債権を(非主力銀行から)買い取り、「産業再生機構(IRCJ)」が主力銀行と協力してその企業を再生させるもの。不良債権の買取りの他に、貸付けや債務保証、そして出資もする。不良債権を主力銀行に集約出来るため、権限の関係でリストラや事業の再構築がしやすくなる。また、米国の「RTC」と同様に時間制限があった。「産業再生機構(IRCJ)」は2005年3月までの2年以内に集中的に不良債権を買い取り、買い取った不良債権は2008年3月までの3年以内に処分されるものだった。再建に失敗したら、先述の「整理回収機構(RCC)」に買い取られ、もし「産業再生機構(IRCJ)の買い取り価額>整理回収機構への売却価額」であれば、二次損失は税金による負担となった。ただ、これは政府主導で、政府保証の資金を10兆円も使えるのが大きかった(当時の不良債権は50兆円規模)。
加えて、「産業再生機構(IRCJ)」の親会社「預金保険機構(DIC)」が不良債権の売り手である銀行に出資し国営化することも可能だった。それで不良債権の売り手と買い手の双方に対し効果があり、不良債権の処理が進んだ。そして「産業再生機構(IRCJ)」は、カネボウ・大京・ミサワホーム・ダイエーなど全41社の企業に約1兆円を投じ、400億円近くの利益を出し、計画より1年前倒しの2007年3月15日に解散した。
「産業再生機構(IRCJ)」でも、十分な結果を出せたが、実は当時の日本でも「国策金融機関」つまり「バッドバンク(Bad Banks、悪い銀行/旧勘定、不良資産買い取り銀行)」の計画があった。「産業再生機構(IRCJ)」が主力の銀行にその不良債権を残すのに対し、「バッドバンク」は不良債権を担当行員ごと「バッドバンク」に集め、集中して再生させる。 不良資産(バッド)を切り離し、優良資産(グッド)を本体に残す事で「産業再生機構(IRCJ)」より不良債権処理のスピードアップさせるものとされた。
「バッドバンク」は1980年代後半の米国で初めて使われ、その後、1990代にスウェーデンや韓国で使われて実績をあげている。日本の「産業再生機構(IRCJ)」では、親会社の「預金保険機構(DIC)」が銀行に出資して国営化した事もあった。この場合の国営化で、国営「受け皿銀行」を使うのが「バッドバンク」と言ってもいいだろう。「バッドバンク」には不良債権の買い取り価格設定など、問題はある。だが、それさえクリアすれば極めて有効な処理法でもある。そして、それが現在の米国で検討されているのだ。
2009年1月29日付米ウォールストリートジャーナル紙によれば、「オバマ政権は現在、銀行の資本増強に向け、普通株の購入など数多くの方法を検討中。政府による購入の対象はこれまで優先株だった。政府が普通株を購入すれば、一部の銀行が事実上国有化される可能性が高まる場合もある。
『バッドバンク』計画には元手として問題資産購入計画(TARP)から最大2,000億米ドル(約18兆円)が拠出される可能性があり、残りはFRB(連邦準備制度理事会)からの借り入れか、政府保証債の発行によって賄われるかもしれない。最終案は数日以内に決定する公算があるが、詳細変更の可能性は残っている」と報じている。