安倍政権に「反原発選挙」リスク 細川都知事なら円安副作用も
[東京 15日 ロイター] -東京都知事選に細川護煕・元首相が立候補したことで、安倍晋三政権の動揺につながるリスクが政権関係者や金融市場関係者の間で浮上してきた。都知事選が原発政策を対立軸にした選挙となれば、安倍政権の掲げる原発再稼動政策が変更に追い込まれる可能性が指摘されている。
また、アベノミクスの背骨とも言える円安進行による経済活性化のルートも、エネルギー輸入額増大から貿易赤字の拡大を招き、想定外の円安加速や長期金利上昇など副作用が表面化する展開も予想される。
さらに成長戦略との関連で期待されている東京都の国家戦略特区構想の推進が停滞する不安も市場関係者の間で膨らんでいる。東京オリンピックを経済成長の推進力にしようとしていた矢先、安倍政権にとって都知事選が大きなリスクになりかねない状況に、市場関係者の目が集まりつつある。
安倍政権動揺につながる恐れ
細川氏の立候補に関連し、安倍政権に近い関係者からは「原発問題が国家イシューになるかもしれない」と不安の声が漏れる。脱原発がかつての「郵政選挙」のように、国民投票の様相を呈すれば、原発再稼動をクリアしようとしていた安倍政権の政策変更を余儀なくされかねず、「オリンピックを第4の矢に推進力をつけようとしていた足をすくわれかねない」と見ている。
マーケットからも、安倍政権の政策実行力の低下につながるリスクの可能性が指摘されている。
ソシエテジェネラル証券・チーフエコノミストの会田卓司氏は、安倍政権がこの先も必要な政策を推進していくには「2月までの地方選挙(1月19日沖縄名護市長選、2月9日東京都知事選、2月下旬山口県知事選)で自民党を勝利に導き、政策が滞りなく遂行される安心感を堅持する必要がある」と指摘する。
しかし、都知事選でもし、細川氏が勝利すれば「安倍政権への信認は下がる可能性がある」と見ている。
そのケースでは、安倍首相の党内での求心力にも影響が出ると見るのはBNPパリバ証券・チーフエコノミストの河野龍太郎氏だ。「自民党内にも安倍降ろしを願う人がいない訳ではないので、党内からも細川人気を利用して政権を揺さぶる動きが出てくる可能性も否定できない」とし、次の自民党総裁選で勝利しても政権運営が難しくなると予測する。
こうした状況を回避するためにも、先の安倍政権に近い関係者は、安倍首相はあまり細川氏との対立軸を鮮明にしないほうが得策だと見ている。「細川─小泉都政が野党勢力結集の受け皿にまで発展していった場合、その影響はさらに大きくなる」(河野氏)と市場関係者もみている。