実力社長を解職 ペンタックス「4月革命」の次

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“4人組”と創業家

 さらに創業部門へのこだわりも垣間見える。1月末、HOYAの鈴木洋CEOは、収益性の低いペンタックスのカメラ事業を売却する可能性を示唆した。が、そのころ、ペンタックス社内はヒット連発に沸き返っていた。デジタル一眼レフの新製品「K10D」や「K100D」が、空前の売れ行きなのだ。そのため、HOYAの強硬姿勢に不満が爆発。経営陣の間では「単独でも生き残れる」との希望的観測が急浮上した。

 合併の最終契約を約半月後に控えた今月4日、クーデターの火の手は上がった。一部の取締役が合併反対と浦野社長の解職を臨時取締役会で提案したのだ。「反対派の取締役は4人いるが、すべての黒幕は岡本だ」。浦野前社長はそう名指しする。創業一族出身の松本徹・元社長の義弟に当たる岡本育三常務こそが、首謀者だというのである。

 浦野前社長は「なぜ、お前が社長をやらないんだ」と岡本常務に詰め寄った。それに対して、岡本常務は「私は心臓が弱いので……」と固辞したという。結局、内紛劇は1週間にもわたることとなった。

 実は新社長に就任した綿貫氏は浦野前社長の言う“4人組”に入っていない。つい最近まで「中立」を保っていたようだ。その綿貫氏がなぜ“反浦野派”に合流したのか。社長ポストをエサに誘われた可能性もある。

 綿貫氏も自らの矛盾した立場を露呈させている。会見で「私は断じて合併反対派でない」と、ほおを紅潮させて訴えたのは印象的だった。ペンタックスとHOYAは昨年6月ごろにも統合を協議し、合併比率が折り合わなかった経緯がある。その際、綿貫氏はHOYAとの交渉窓口を務めた。経営統合がいかにペンタックスの将来に有効かを、綿貫氏は熟知しているはずなのだ。

 新経営陣は合併を撤回したものの、単独で生き残れるシナリオを描けていない。「2001年ごろの最悪期と違い、今の成長過程では(合併以外の)選択肢もあるはず」(綿貫氏)と語るのみ。今後、大株主らが納得できる成長シナリオを示せるかがカギだ。

 社長職を解かれた浦野氏らは取締役に残留しており、新経営陣は一枚岩ではない。HOYA側の今後の動きに対し、再び混乱を露呈する局面も予想される。

(書き手:吉川明日香 撮影:尾形文繁)

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