安倍首相「北朝鮮と直接対話」発言の真意 「条件つけずに向き合う」にいぶかる北朝鮮

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安倍晋三首相は北朝鮮との直接対話に意欲を見せ始めている(撮影:尾形文繁)

5月に入り、安倍晋三首相が北朝鮮との直接対話に意欲を見せ始めた。

アメリカのトランプ大統領と6日に行った電話会談で、「私(安倍首相)自身が金正恩・朝鮮労働党委員長と条件をつけずに向き合わなければならない」と述べ、日朝首脳会談の実現に動くと明言した。首脳会談を行う以上、日本人拉致問題の解決に資する会談にしなければならないとしてきたこれまでの姿勢から、軌道修正を行ったことになる。

北朝鮮が首脳会談に応じる可能性は低い

では現在の状況で、北朝鮮は首脳会談の実現に応じるのか。残念ながら、答えはノーだ。それは、北朝鮮がこれまでの安倍首相の言動をまったく信頼していないためだ。「条件をつけず」と言っても、再び強硬姿勢を続け、常套句の「拉致問題の解決のための会談」と言い出すのではないか――。日本としては拉致問題こそ、北朝鮮に対する最大の問題だが、北朝鮮は拉致問題を解決済みとみなしており、これ以上話し合う名分がない問題だ。

日本との話し合いに応じる優先順位も低い。北朝鮮の外交は、一にアメリカ、二にアメリカ、三が韓国、四に中国、ロシアで、日本はその次だ。今年2月下旬にベトナム・ハノイで開かれた米朝首脳会談以降、アメリカとの関係は2018年と比べてぎくしゃくしている。しかも5月に入って短距離ミサイルを2回発射するなど、北朝鮮は挑発行為も行った。それだけアメリカとの問題に神経を集中させており、日本への関心は低い。

安倍首相の発言には、「7月の参議院選挙をはじめ、安倍首相は目先の手柄を上げる必要に迫られている。安倍外交の主軸の1つであるロシアとの北方領土交渉の進展にも減速感が生じている。それなら、北朝鮮と対話でもするか、という下心があるように北朝鮮には見えている」(中国の北朝鮮研究者)。しかも、安倍首相は拉致問題に深くコミットし、その後首相の座を得た人物ということが北朝鮮でも広く知られている。そんな人物が「条件つけずに会おう」と言ってもにわかに信じられない、ということだ。

もちろん、日本では「過去の清算や経済支援といった名目で金が入るなら北朝鮮は対話に応じる」という見方はある。だが、いまや金の出どころは日本だけではない。現実的に商売相手となっている中国や韓国もそうで、アメリカとの関係が改善すれば経済環境は好転し、アメリカ企業をはじめ他国から資金が流入するだろう。日本のポジションは相対的に低下しているのが現実だ。

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