大砲のない「海賊船」は水戸岡デザインの真髄だ 船の「ななつ星」は、平和を祈るシンボルだ
鉄道からバス・船舶へ――。JR九州の豪華寝台列車「ななつ星 in 九州」から東急電鉄の「ザ・ロイヤル・エクスプレス」まで、鉄道の既成概念を打ち破るデザイン列車を次々と発表し、多くの鉄道ファンをとりこにした水戸岡鋭治氏は、活躍の場を鉄道以外にも広げている。
今年1月に運行開始したクラブツーリズムの豪華観光バスのデザインを担当し、さらに船舶の分野にも進出した。4月25日から箱根・芦ノ湖で運航開始した「クイーン芦ノ湖」のデザインも水戸岡氏の手によるものだ。同船の試乗会が4月23日に行われた。
「女王陛下が乗る船」
クイーン芦ノ湖を建造したのは小田急電鉄の子会社・箱根観光船。同社は「海賊船」と呼ばれる3隻の観光船「ロワイヤルⅡ」(2013年就航)、「ビクトリー」(2007年就航)、「バーサ」(1991年就航)を芦ノ湖で運航してきた。いずれも17~18世紀にイギリス、フランス、スウェーデンで活躍した戦艦をモデルとしており、当時の雰囲気を再現する内装を施している。
クイーン芦ノ湖は老朽化した「バーサ」を置き換える形で導入された。新たな海賊船のコンセプトは「女王陛下が乗る船」。箱根観光船の岡本裕之社長は「上品で上質な居住空間を提供したい」と説明していた。
小田急は箱根エリアに総額100億円の大規模投資を行っている。今回の海賊船の新造はその目玉だ。「新たな海賊船が、箱根にお越しいただくきっかけとなれば」と、岡本社長は期待する。そのためには話題づくりは不可欠だった。
水戸岡氏の起用については「幅広いデザイナーに当たったのではなく、最初から水戸岡さんにアプローチした」。ななつ星のデザインの力強さに衝撃を受け、「この人しかいない」と感じたという。
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