DMM亀山会長「1社に長く勤めるのも能力だ」 グループ創業者が語る「逆張りのIT組織論」
――確かに、最近はむしろ「面倒見がよくない」スタイルのほうが、IT業界では好まれる傾向が強まっているかもしれません。
スタートアップ経営者なんかと話していると、「1つの会社に長くいるやつは羊だ、社畜だ!」とか、「サラリーマンをアップデートせよ!」とか、かなり強く言う人がいる。でも、長くいることだって能力じゃないかと。長くいてくれる社員のほうが、会社としてはその人に投資する気になれる。サービスの安定性とか継続性を保つうえでも、長くいる社員の役割は大きい。
現在、DMMグループの従業員は約4000人で、過去5年で4倍以上になっている。生きのいい若手もたくさん入ってきているが、決してそういう“跳ねっ返り”ばかりいるわけではない。10年、20年と、財務経理、営業、カスタマーサポートみたいな専門性を磨いて地固めをしてくれている社員がいる。コツコツ人材も、跳ねっ返りも、外国人も、ヤンキーも。いろいろ、ごちゃまぜなのがいちばん面白いし、成長するために必要なことだと思う。
もちろん、「社員を守る」というだけではダメな面もある。エンジニアはどんどん移り変わっていく技術にキャッチアップするための勉強が必要だから、終身雇用的な組織だと、ちょっとのんびりしちゃうところがあるかもしれない。それでもやっぱりうちでは、持っている技術が古くなってしまったエンジニアでも、異動できる先を作っておきたい。
アダルト草創期のメンバーの大切さ
――ここ数年は組織改革を進める中、アダルト動画制作は社外に売却し、残ったアダルト動画配信の事業もDMM.com本体から分社化しました(現在も持ち株会社の傘下には存在)。完全に撤退することは考えていませんか?
今のところは考えていない。アダルトがあったから、その強みでDMMができたというのもある。ただ、今のDMMはアダルト以外のデジタルコンテンツも含め、プラットフォームとして強くなっている。それに、アダルト市場はこの先そんなに伸びる感じでもない。コンテンツの性質上グローバル展開が難しく、それだったら今強化しているアニメコンテンツ制作などで世界市場を狙ったほうがいい。
当時だって、アニメとかのコンテンツ制作に参入できればよかったけど、お金がなかった。だから少ない資金でもできるアダルトに行った。当時、特に田舎にはベンチャーキャピタルなんてないし、信用金庫からお金を借りて商売するしかない。そういう状態では、目の前のビジネスをコツコツ、できる範囲でやるのみだった。
アダルトが事業の中核になったら銀行借り入れが難しくなるなとか、そういう迷いはあった。ただそんな中でいちばん後押しになったのは、当時の社員が「しょうがないですね、やりましょう」とついてきてくれたこと。旅行代理店やレンタルの事業部にいたメンバーがアダルトのチームに移動してくれたから、そっちに踏み出そうと。今でも当時からいるメンバーがたくさん会社に残っている。そういう意味でも、昔からいる人はすごく信頼しているし、大事にしたい。
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