流通界の新王者・ユニクロ、フリースを超えた!ヒートテック革命の衝撃《特集・流通大乱》
あのフリースをついに超えた--。カジュアル衣料店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが、「ヒートテック」で新たな歴史を刻もうとしている。
ヒートテックは、同社と東レが共同開発した機能性インナー。綿100%が主流の下着市場に、新素材で切り込もうとユニクロが提案。東レが高い合繊の技術開発で応えた商品だ。価格は1000~1500円だが、「今までの下着より温かい」「おしゃれのベーシックアイテムとしても着れる」という機能性・利便性が受け、前年比4割増、今秋冬物だけで何と2800万枚を完売した(海外100万枚含む)。空前のフリースブームに沸いた2000年の秋冬、ユニクロが販売したフリースの枚数が約2600万枚だったから、その衝撃度がわかるはずだ。
東レと共同で年々“進化”まだまだ成長途上
衣料が売れない、と泣きが入る他社を尻目に、同社の業績は絶好調。1月9日発表の今期第1四半期は売り上げが前年同期比約17%増、営業利益は約45%増。これまでの過去最高の営業利益、01年8月期に記録した1020億円を今期は更新しそうな勢いである。
実はヒートテックは03年、主に夏向けメンズ用としてスタートしていた。その後、両社で機能を年々充実。その特長は「暖かさ(アクリル)、肌になじむ保湿性(レーヨン)、吸水速乾性(ポリエステル)、フィット性(ポリウレタン)の大きく四つ」と小川彰東レGO推進室長。
特に、保湿性が加わって女性の支持に火がついた。「週3~4回は両社のスタッフがミーティングを開き、工場に出向いて改良に改良を重ねている」(西川雅昭ユニクロ・カットソー・ニット・インナー生産部長)。顧客のニーズを酌み取り、企画から生産までの苦楽を共にするのは両社合わせて50人。「バーチャルカンパニーのように一つの会社のようなもの」(西川部長)という。
だが今のところ、フリースのときのように、誰もが着ている状態には至っていない。なぜか。それは、かつてのフリースとは異なり、1人が何枚も買っているからだ。インナーは直訳すれば下着。だが、ヒートテックはその枠に当てはまらない。メンズ、ウィメンズ、上下用、長・半袖、キャミソールからタートルネックまでアイテムはさまざまだが、用途が実に広い。たとえば、これ1枚で下着とカットソーを兼ね、着膨れを防げる。部屋着としても着られる。市場飽和どころか成長途上なのだ。
足元では女性の潜在的なニーズに応え、静かな「ファッション革命」が進んでいる。09年の秋冬にはさらなる進化が加わる。ヒートテックがユニクロを、さらなる高みに導こうとしている。
(週刊東洋経済)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら