東急電鉄が社名変更、電鉄を外して「東急」だけ 鉄道事業を分社化し、子会社名は「東急電鉄」

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田園都市線で相次いだトラブルを受けて行われた緊急安全総点検の様子(撮影:尾形文繁)

だが、田園都市線を中心にラッシュ時の混雑は激しく、近隣他線で進む輸送力増強などを横目に沿線利用者からは不満の声が漏れる。また、2017年秋には同線で立て続けに停電トラブルが発生するなど輸送障害が頻発。総点検の実施で大きなトラブルはなくなったが、今後もインフラの維持や輸送力増強など、鉄道事業の課題は数多い。新生・東急電鉄はこれらに対し「スピード感を持った」対応が求められることになる。

一方、「東急」本体に残る不動産事業は大規模再開発を進める渋谷や、今年秋に「まちびらき」を行う田園都市線南町田駅周辺の「南町田グランベリーパーク」などの大型プロジェクトも多く、東急グループの大きな柱だ。中期3カ年経営計画によると、2020年度には売上高、営業利益ともに交通事業を不動産事業が上回ることになっており、今後の「グループの持続的成長」を牽引する柱に不動産事業を据えていることがわかる。

鉄道の信頼性維持を

東急の前身である目黒蒲田電鉄は、田園調布などの宅地開発を目的として設立された「田園都市株式会社」の鉄道部門を分離する形で1922年に発足しており、もともと不動産デベロッパーを母体として生まれた鉄道会社だ。だが、その開発事業は鉄道事業が持つ信頼性の高さがあってこそ大きく発展してきたといえる。

東急は分割後の社名発表に先立つ3月26日、今年秋から目黒線に新型車両を投入し、さらに2022年度上期から車両を6両から8両に増やす輸送力増強策を進めると発表した。同年度下期に予定される東急新横浜線(日吉―新横浜)の開業までに全26編成を8両編成に増やし、朝ラッシュピーク時の1時間あたりの輸送力を2万1300人から2万4000人へ約13%増加させるという。

鉄道の分社化後、さらに機動的な鉄道輸送の改善策を進めることができるか。鉄道を「事業の主軸から外した」と言われないためにも、グループの柱である鉄道事業の信頼性をおろそかにはできない。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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