仕事のできない人は「勘」の力をわかってない 論理的思考は大事だがそれだけでも不十分だ

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当然ながらそこではロジックが求められるので、左脳で考えることになる。そして、そののち実際に納得してもらうためには、彼らの感情すなわち右脳に働きかける必要がある。

こうした一連のプロセス(3つのステージ)を経て、人ははじめて行動に移す。
簡単に言ってしまえば、最初に右脳を働かせ、次に左脳で考え、最後に再び右脳を活用するというプロセスを踏むことで、物事が前に進む。いわば真ん中の2番目のステージで中心的役割を担う左脳の思考法を、1番目と3番目のステージで使う右脳がサンドイッチする構造になっている。(64〜65ページより)

はたして後天的に身につくのか?

内田氏が「右脳思考」の重要性を訴えることには、このような根拠があるのだ。確かにそれは納得のいく考え方であり、ビジネスのさまざまな領域において活用することができそうだ。

ただし気になるのは、「得手・不得手」の問題だ。生まれつき右脳力のある人であればいいのだが、一方にはそうでない人もいる。つまり、右脳力のなかでも「勘」は後天的に身につくのかという問題に突き当たるのである。

なぜなら「勘」「直感」などと呼ばれる右脳の力は生まれつきの部分があり、後天的に鍛えることは難しいのではないかとも思えるからだ。しかし、内田氏はそうは思わないのだという。

自らの「勘」を把握する

まずは自分がどんなことには勘が働き、どんなことには働かないのかを自覚しておくことが大切であり、それを踏まえたうえで、勘を鍛えていけばいいというのである。

そこでヒントになりそうなのは、「プライベートのやり方を仕事に活かす」という考え方だ。

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プライベートの時間を過ごすとき、過去数カ月の活動履歴を調べたうえで「今週は勉強時間が足りないから3時間勉強しよう」などと考える人は少ない。

多くの場合は「ここしばらく勉強してないから、ぼちぼちやるか。でも、友だちともしばらく会ってないしな」というように右脳思考をするはずだ。その結果、「今日は遊びたいな」と思ったときに、心のどこかで「最近遊びすぎではないか」「少し勉強したほうがいい」というようにチェックが入ったりする。

右脳で考えて、左脳でチェックするというのが普通の行動パターンだということ。これを、仕事でも活かすべきだと内田氏は言うのだ。

仕事の優先順位あるいはやり方を考えるときに、ロジカルに考えるのではなく、感情や思いつき、好き嫌いで考えてみる。なぜかと言えば、ロジックや義務感で考えると、仕事を処理する感じになってしまい、ワークライフバランス的にもよくない状況に陥る。
したがって、まずはどうしてその仕事をやるのか、あるいはどうしたら仕事が楽しくなるのかなどを考えることが、ビジネスでも重要になる。(205ページより)

確かにこれは、日々の仕事に追われ続ける中にあっては、なかなか気づきにくいことかもしれない。いずれにせよ、頭のなかをすっきりまとめ、仕事を効率化するためにも、意識しておく価値はありそうだ。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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