話が面白くない人は「ある勘違い」をしている 素人お笑い評論家から脱却するためのコツ

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この法則に気づいた私は、その後、本格的にアメリカでインプロを学びました。体系的にまとめられた「人間が笑う話のロジックのパターン」を、私は1つずつ自分の頭に叩き込んでいきました。

そのおかげで、帰国後、私はお笑い芸人になることはできませんでしたが、NHKの番組でディレクターとして働いたことをきっかけに、放送作家として活動することができました。今では、放送作家としてプロのお笑い芸人や俳優の方にトークを指導した経験を活かしながら、一般の方向けのアドリブトーク講座も受け持ち、成果をあげています。

ウケる人は「目の前にいる人」の反応を見ている

拙著『ウケる人、スベる人の話し方』の中では、インプロをマスターした私の知識と経験から、普通の人がシンプルにウケるためのアルゴリズムを、紹介しています。このなかでは、ウケる人側のアルゴリズムを学ぶだけでは不十分だと思い、スベる人側のアルゴリズム=「なぜ、素人お笑い評論家になってしまうのか」という視点も盛り込みました。

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たとえば、スベる人にありがちなのが「ネタに意識が行きすぎること」。これは、私がこれまで見てきたスベる人の多くが勘違いしている点です。つまり、しゃべっている最中、話しているネタの内容といった、自分の関心があることにしか目が向かず、その場のウケる雰囲気作りをおろそかにしている、といったことです。

一方、ウケる人は「目の前にいる人の反応」をよく見ています。ウケる人というのは、目の前の人をよく観察し、笑いを欲している雰囲気を感じ取ったとき、そこで初めて冗談を言っているのです。

ご存じ、タモリさんの残した名言に、「やる気のある者は去れ!」があります。タモリさんいわく、「やる気のあるやつは物事の中心しか見ていない。でも、お笑いっていうのは、その周辺から面白いものが始まっていく。だから、真ん中しか見ないやつは全然ダメ」ということだそうです。

このように、「紙一重の差」が、ウケるかスベるかを分ける大きな違いを生んでしまっていることは、思っている以上に多くあります。ですので、あなたもウケる人になりたければ、「スベってしまうパターン」を知ることを心がけましょう。

渡辺 龍太 放送作家、即興力養成講座講師

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わたなべ りょうた / Ryota Watanabe

幼少期から口数が極端に少ない性格だったが、アメリカ留学時に受けたインプロ(即興力)がきっかけとなり、以降日本人向けの即興力研究に注力。帰国後、NHKのディレクターに就任。番組出演者への即興力アップの指導も開始。現在は大手芸能事務所「浅井企画」のプロ芸人向けのアドリブ講座や公開講座でインプロ講師としても活躍中。

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